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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.99

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

床の歩行の快適性を空間区分で考える

犬や猫と暮らす住まいというと、真っ先に必要と上げられるのが「床」の仕上げのことですね。犬猫にも快適な床を与えてあげたいですが、人の住まいの中ですから、人が歩きにくかったり日々のメンテナンスに手間取るようではいけません。そして、質感や美観といった人の生活の豊かさが阻害されても残念です。そのため、清掃性が良くて傷もつきにくい素材でありながら、犬が小走りになっても無理のない程度といった、お互いに折り合いを付けなくてはいけません。

ただ、犬も猫も、走りまわりやすい床と、走ると滑りやすい床があれば、滑りやすい床では滑らないように歩きます。つまり、床の感触を変えることで、犬猫の住まいの中での動きや行動を誘導することが可能になるのです。そこで、床の歩行の快適性を上げてみる工夫について、今回は床の感触で空間にメリハリを付ける方法をご案内します。

家の中の空間区分を「静」と「動」で考えてみる

そもそも、室内は、犬にとってもゆっくり静かに寛げるように設えるべきで、「走り回るように」全体を対応するのは、家族が寛げないのでナンセンスです。ただ、日本の状況では、暑い時期や梅雨の時期など、室内でもちょっとした運動が必要な場面があります。そのために、建築的配慮としては、第16回「室内で犬と遊びながらトレーニング」でご案内したような、あえてアクティブな動きをする場所を創ってあげます。空間にメリハリを付けて、「静」と「動」で空間区分をすると、トレーニングの効率もあがるのでお勧めです。このヒトと一緒に遊び、大きな動きを伴う活動をする「動」の空間を「プレイスペース(相互活動空間)」と読んで、ハウス空間の前に確保するようにお勧めしています。

床の感触で空間区分をして、動きを誘導する 

「静」と「動」という空間の区分は、床の足触りの「柔らかさ」でメリハリを付けるとより分かりやすくなります。先に上げたように、床の歩行感で「こう歩いて欲しい」という誘導することが可能なので、特にヒトの後追いをしがちな犬にお薦めしたい工夫です。例えば、一般のご家庭ではリビングや廊下などは、フローリングの床が多いですが、「プレイスペース」のような「動」の空間には、滑りにくいだけでなく、カーペットのような柔らかい素材を部分的に敷き込みます。犬は蹴り込む動作で爪が床にはじかれやすいですが、「柔らかい」床部分ではジャンプしたり走ったりという動きが快適になるので、激しい動きがしたくなった時にはこの「柔らかい」床部分を選ぶようになります。しっかり「柔らかい」床で「動」の空間を確保すれば、硬く滑りやすい場所では丁寧に歩くなど、犬も使い分けます。

犬も猫も床の使い方を覚えると、遊びたいときには、柔らかい床の「プレイスペース」にオモチャを自分から持ってきて誘ってきたりします。また、マットなど折りたたみ式や置き床を活用した場合、「柔らかい床を広げた時が遊ぶ時」と、合図として理解するようにもなります。

このように、床の柔らかさの仕様を変えることで、犬や猫にも空間の使い方や動きを促し、さらに、ヒトとのコミュニケーションのアイテムとして犬や猫達に応用されるので、上手に床の仕様の違いを利用してあげたいですね。

フローリング床
やわらかい床

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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