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  3. 第104回 猫のために必要な空間~半屋外空間のすすめ

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.104

犬や猫と共に暮らすためのアイデア

猫のために必要な空間
~半屋外空間のすすめ

それぞれの空間で趣の違いを出すには

前回では、「猫に必要な広さ」は探索行動を楽しめる「空間数」であることや、「狩り(遊び)」に適した空間と、「休息」に適した空間の二つが必要とご案内しました。「遊び」とは「動」で、「休息」は「静」と言っていいでしょう。一般のご家庭であれば、「家族が集まる賑わう場所」が「動」、書斎や寝室など「静かに過ごす場所」が「静」に整えやすくなります。

また、趣の違う空間が二つというと、「動」+「静」だけでなく「明るい」+「暗い」や、「屋内」+「屋外」という組み合わせがありますね。色々とご自宅の条件にそって工夫してみると面白いです。

特に「屋内」と「屋外」です。窓から外を眺められるだけでなく、風や香りで季節を感じたり刺激を得たりすることができるので、猫に向けての半屋外空間をおすすめします。

半屋外空間「CATIO」のすすめ

猫に日光浴や季節の風を楽しませるための半屋外空間は、中庭空間というスペイン語の「PATIO」と「CAT」からの造語で「CATIO(キャティオ)」と呼ばれて世界中で人気です。リビングに隣接したお庭、テラスやバルコニーが活用できます。

実は、テラスやバルコニーに面した窓先というのは、猫が飛び出してしまう危険度の高い場所です。窓先は「洗濯物を干す」というヒトの日常的な家事行動で出入りが頻繁にあり、さらに、外の鳥が立ち寄りやすいという、猫にとっての刺激の多い場所です。このように、窓先は猫が誘われてうっかり飛び出してしまい、迷子になってしまうという危険ポイントなのです。そんな危険な場所ではありますが、窓先をフェンスなどでサンルーム状に囲うなどすると、猫も屋外を安全に楽しめて一石二鳥です。

ウッドデッキのサンルームに設えたCATIO

半屋外空間内にも2種類の趣の違う空間を設える

半屋外空間を設けたことで、「屋内」と「屋外」の2つの質の違う空間が確保できることになります。さらに、そこにも「静」+「動」や「明るい」+「暗い(日陰)」といった変化を持たせられると、その時々の気候などの条件で、猫達は過ごし方のバリエーションを楽しめることになります。

「CATIOは猫の屋外運動場!」とタワーやアスレチックを配置して「動」の空間に設えがちですが、一般のご家庭では、ベンチなどでゆっくりひなたぼっこをしたり、風で涼んだりという「静」として設える方が、私としてはお薦めです。そして、日光浴を楽しむ場所ですが、木陰やスダレなどで日陰空間も確保しておきましょう。庇が深くない場所では日差しで床が熱くなるため、床材をウッドデッキにするなど、一工夫も必要です。

完全室内飼育であっても、このような窓先の設えで屋外が楽しめる工夫を、積極的に取り入れてほしいと思います。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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