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  3. 第102回 猫の好きな場所とは?-休息場所の形

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.102

犬や猫と共に暮らすためのアイデア

猫の好きな場所とは?
-休息場所の形

猫のための室内の工夫として、キャットタワーや高所の猫専用通路のいわゆるキャットウォークが人気です。また、外を眺められる場所や日当たりのよい窓辺などが、猫に好まれている場所と思われていますね。ただ、それが本当に猫達に猫のお気に入りなのか? というと、単なる私達の勝手な思い込みがあるかもしれません。

猫に直接「どんな場所が好きですか?」とアンケートを採ればはっきりするのですが、動物にはヒトと同じようなアンケートを採ることは難しいです。そこで、動物たちに環境の評価を聞き出す手段の一つとして、行動観察による分析がなされることがあります。

「室内飼育の一日の猫の活動パターンや休息場所」の調査

室内飼育の猫の自発的な活動パターンについての調査報告が2017年にありました。超広帯域無線による位置情報を使った猫の空間活用と活動の精度評価の実験でしたが、その報告には、「どんな場所にどれぐらい居たか」という事も結果の一つとして示されていました。興味深い調査でしたので一部ご紹介します。

研究したのは、フランス・ロイヤルカナンリサーチセンターのチームで、ロイヤルカナンの研究施設で飼育されている6頭の猫達が対象でした。猫達は避妊去勢済みの3才で、4頭がメスでした。位置情報がわかる高性能なセンサーが首輪に付けられ、2週間にわたり24時間の活動パターンを記録したそうです。

観察対象となった猫達の⽣活空間は、遊びのための「エンリッチエリア」を含めた「室内エリア(22. 5㎡)」と、「室外エリア(7㎡)」とに分けられていました。調査期間中は⼈間の⼊室を1⽇2時間強に制限した上で、猫たちの⾃発的な活動パターンを記録しています。人の入室を整理したのは、人の接触によっても行動が変化する可能性があるためでしょう。

猫達は7割をお気に入りの場所で休息していた

調査の結果、猫達は1日のほぼ7割の時間を休息場所でじっとしていた状況がわかったそうです。そして、休息場所として利用されていた場所というのは、室内エリアの壁際に設けられた階段状の棚が「11時間22分」と一番長く、次に、外に⾯した中庭エリアにおかれたキャットツリーの使⽤時間は「4時間1 0分」でした(一日単位です)。ちなみに、中庭エリアでキャットツリーの側に置かれた「椅子」には「7分」、屋内エリアの遊び道具などが置かれた「エンリッチエリア」には「1時間4分」でした。椅子よりもキャットツリーが好まれたのは、高さの関係だろうと推察されています。

猫の居場所の調査平面図
(参考文献の図より引用の上、日本語表記加工と補足図加筆)

猫達の休息場所として好まれる場所は?

この研究からは、猫の休息場所として好まれた形状は「キャットツリーよりも棚形状」であること、高い場所で「日当たりさえ良ければいい」ということでもないということも読み取れます。猫のための休息場所をつくるための、配置や形状の一つの目安ともできるのではないでしょうか。この研究の後にも、犬や猫達の環境評価を得ようとする実験が行われているようですし、条件が変われば、また違う結果が出る可能性もあります。ご家庭ではそれぞれ条件が変わります。皆さんのご自宅ではどんな場所に長く猫達がいますか?研究者になったつもりで観察してみるのも面白いですね。

参考文献

M.Parker, et al:Accuracy assessment of spatial organization and activity of indoor cats using a system based on ultrawide band technology, journal of Veterinary Behavior 21,pp.13-19,2017

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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