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  3. 第100回 床の歩行の快適性を犬の様子から推し量る

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.100

犬や猫と快適に暮らすための
インテリア

床の歩行の快適性を犬の様子から推し量る

「静」と「動」の空間区分を行って、床の感触でメリハリを付け、犬猫の住まいの中での動きや行動を誘導する提案を前回しました。要約すると、飛んだり跳ねたりしても快適な床のある空間が確保されていれば、他の場所(ただ歩くだけの場所)ではそんなに心配しなくても良いですよ、という事でした。特に犬の飼い主さんは心配されることが多いので、生活全体のバランスで考え、床の事のみで安全を解決しようとしないで欲しかったのです。ただ、その普通に歩く場所が、「歩くだけ」なら安全かどうかは、どうやって判断すればいいのでしょう。

そこで今回は、ご自宅の床に「普通に歩くだけ」でも、犬にとって歩きにくいかどうか、金巻の場合の判断の目安をご紹介いたします。

滑る床で生活されているときの問題

どんな床であっても、生活者はそれに合わせて転ばないような足運びをして歩行をします。ただ、犬のリハビリテーションを行っている整体師さんによると、犬が床に合わせて歩き方を工夫していることで、体に負担が出ていることもあるそうです。滑りやすい床だと脚裏でしっかり蹴り込んで歩けないため、上に跳ねながら歩くかのような動きをして腰に負担がかかっていることがあるそうです。また、足を大きく上げて歩かないために関節の柔軟さが落ちてきて、体の重心がずれてしまっている状況も見られるのだそうです。

平滑床での、注意をすべき犬の状態とは

こういったことから、私が床の滑りにくさの目安としている犬の様子は、「静」の場所での座り方です。座ったときに前足が何度も滑ってバタバタしてしまうような床は「犬にとって、すごく滑りやすい」と言えます。そして、静かに座っているようでも、後ろ脚が横に広がらずに座っているかどうかも確認します。床が滑りやすいと、犬は足を広げて内モモで座るような体勢をとります。お腹や内モモを付けて座って居るような様子があれば、その床は歩くのにも少し負担があるかもしれないのです。滑りやすそうな手触りがあれば、日々の積み重ねで体に負担をかけないよう、防滑性や緩衝性のある床にしてあげましょう。

座り姿-足を開いて内モモで座っている
座り姿-足を閉じてお尻で座れている

カーペット以外の足に優しい床とは

床の状況を、硬く平滑な床と柔らかく凹凸の多い床で比較することが多いですが、「犬家猫館」では、平滑な床の代表としてフローリングを、柔らかい床の代表としてカーペットを取り上げてお話ししてきました。そして、廊下の中央や運動する場所だけカーペットの部分敷きをして、両方の素材のメリットを生かす方法を提案しています。しかし、2頭以上いるとか、ケアに時間をかけられないご家庭の場合、清掃性を上げるために、部分ではなく全面的に対応したくなります。その場合は、平滑な床をフローリングではなくシート床材とすることをお薦めします。シート床材でも発泡構造のある「クッションシート」は、その名の通り柔らかく、水汚れにも強いのでお薦めです。

クッションシートにも店舗などの土足利用を想定したシリーズがあります。これらは、緩衝性がありながら防滑性と耐傷性(傷がつきにくい)も高いので、特に中型犬以上にお薦めです。大型犬で生活空間が半屋外とか、お庭からの出入りが多いといった場合は、半屋外用のシート床材から選ぶと良いでしょう。頑丈である分クッションシートより硬いですが、凹凸があって水濡れした時でも滑りにくく、なおかつ、砂汚れのお掃除がしやすいよう、仕上げに工夫がされているので便利です。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

  • 「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」増補改訂版

    単なるペットのトラブル対策に終わらないしつけやトレーニングも踏まえながらのアドバイスが満載。かわいいイラストも◎。改訂版では、室内環境の意識が高まっている猫の情報と、東日本大震災で課題がみえたペット防災対策が増えました。

    彰国社刊 定価(本体 1,800円+税)

  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)