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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.96

犬や猫の安全

防災から考えるハウス(後編)

後半では、「自宅避難」に向けた、日頃の「隠れ家」を災害対応するための空間構成などについて考えてみましょう。

「自宅避難」にももちろんリスクはあります。災害時ですから停電などといった環境リスク、また、情報は避難所に集まるので、情報が不足がちで支援物資の確保に苦労するということがあります。しかし、避難所に犬猫が入れたとしても、ケージに入れて積み重ねられたり、犬猫は屋外の「ペット避難所」に集約されたり、過酷な状況が過去の災害で見られました。自宅建物が安全であれば、大勢の人や動物でごった返す避難所よりも、住み慣れた自宅で避難生活を送れることは、犬猫にとってリスクを上回るメリットがあると言えます。自宅避難のリスクに対策しながら、メリットを生かすことを考えたいものです。

「自宅が災害に強いように」と、住宅商品としても、新築では耐震設計が、既存の建物では耐震補強に自治体の支援があるなどされており、すでに耐震を取り入れているご家庭もあるでしょう。さらに、この自宅内での犬猫たちの「隠れ家」が、「避難時」だけでなく「避難生活時」にも活用されるよう、自宅内の配置をおさえておきましょう。

ハウスやケージといった「隠れ家」のある部屋が、扉や窓などで「空間を仕切る」構造であると、この空間が自宅内の犬猫の「避難所(シェルター)」として機能するようになります。災害時には閉じられていないと、何かに驚いての飛び出しての迷子、と言う事故になりかねないからです。日常生活では、「仕切り戸」は開放しておき、オープンな空間でも構いません。

どのように「空間を仕切る」かですが、自宅を箱として考えてみると判りやすくなります。

防災隠れ家の構造
防災に向けた「隠れ家」の構成イメージ

一番初めの箱①は、「隠れ家」となる、箱状の潜り込める寝床です。寝床を囲うサークルやケージが2つめの箱②となります。ここまでが、犬猫達の個室のようなものですね。そして、このサークルやケージが置いてある部屋が、3つ目の箱③となり、ヒトなどの家族とのふれ合い「相互活動空間」として利用される空間です。大外になるのは、自宅建物(また集合住宅であれば、その部屋)で、これが4つ目の箱④です。

「隠れ家」を創ったお部屋がリビングであれば、それが③となり、この部屋を災害時に犬猫の避難所とする場合は、他の部屋や外部に開放されていないように、扉などで仕切ります。そして、窓などは、災害時に割れたりという可能性があるので、破損しても開放とならないよう、飛散防止シートで対策し、飛び出し防止用の格子などがあればより良いでしょう。

災害時に犬や猫が「自宅避難」するためには、寝床を「隠れ家」としておくだけでなく、その隠れ家を配置したお部屋の配置や構造といった整備も、重要であるということです。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

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