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ペットと暮らす住まいのポイントを
ケーススタディでご紹介します。no.95
犬や猫の安全
災害が起きた場合の、迅速で安全な避難に向けて、「隠れ家=犬猫に箱状のハウスやベッド」を日頃から活用しましょうと、「第44回 防災対策にハードクレート」でご提案しています。近年では、地震だけでなく雨の災害も増え、災害対策が見直されており、犬猫の「隠れ家」も、避難生活の負担を減らす対策の一つとして注目されています。
そこで、今回は避難のあり方から改めて考えてみましょう。
大規模災害発生時に犬猫が飼い主さんと共に避難するのが「同行避難」です。同行避難対策は、徐々に社会に浸透してきているとはいえ、地域や避難所によって対応に差があります。特に、人口の多い地域では避難所の数に対して被災者が多くなるため、避難所での犬猫の居場所の確保が厳しくなります。
これまで、災害が起きた時、あるいは豪雨などの災害が予想される時、今までは「避難所へ避難する」ことが前提でした。これが、近年の避難対策の見直しで、避難所へ避難しないという「自宅避難」、また、一時的に別々の場所に避難する「分散避難」という考え方が示されています。
「自宅避難」では、自宅が安全であれば、避難生活も避難所に行かずに自宅で過ごして、支援物資や情報だけ避難所に受け取りに行くという避難生活となります。
「分散避難」とは、犬や猫とヒトの家族が、それぞれ安全な安心できる別々の場所で、避難生活をするものです。自宅が危険で、避難しなければならない場合に備え、避難所以外の避難先を平時に複数確保しておくことで可能になります。例えば、台風など天気予報などで「予想できる災害」の場合では、避難指示解除までの短時間の避難ですむ場合もあります。そういった場合、安全な場所にある知人宅や飼い主仲間、実家や親類宅に避難する、または、犬猫だけ動物病院などに預けて、ヒトの家族はホテルに宿泊避難するといったタイプもあるでしょう。
また、自宅が無事であっても、ヒトが高齢者のみの世帯であるとか、健康上の不安から避難所の方が安心であるとされた場合は、犬猫は自宅での飼育を続け、ヒトだけ避難所に入り、世話をしに自宅に通うという避難のしかたも、熊本地震の時に見られました※。このケースは、犬猫は「自宅避難」で「自宅飼育」する「分散避難」と言えますね。
自宅の状況によって、犬や猫達の「避難の場」が変わるということなので、犬や猫がいるご家庭では、「自宅避難」をできるように、自宅を耐震補強をするなど住まいの災害対策をしておくことを私はお勧めしています。
後半では、災害に備えた「隠れ家」の空間構成などの工夫について考えてみます。
※資料提供:NPO法人ANICE(https://www.facebook.com/npo.anice/)
profile
金巻先生(一級建築士)
一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。
犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。
著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。 ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。 H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」
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