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  3. 第94回 家庭にある口にすると危ないものへの住まいでの配慮(後編)

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.94

犬や猫の安全

家庭にある口にすると危ないものへの住まいでの配慮(後編)

中編に続き、後編では、生活空間に置かれやすい薬物について、浴室や洗面室にある危険に触れてみます。浴室や洗面室には、化粧品や整髪料、育毛剤にシャンプーといったアイテムが置かれています。化粧品や整髪料は、人が体に直接付けるので忘れがちですが、洗剤同様に体に影響を与える薬剤なのです。

犬や猫が浴室や洗面室に出入りできてしまうと、化粧品やシャンプーなど舐めてしまうこともあります。直接舐めなくとも、床にこぼれていた液体が足の裏についたりします。それを舐めて口に入ることで体に影響がでるのです。できるだけ立ち入り禁止としましょう。お家の構造上、出入りができてしまう状況であれば、洗面や浴室洗い場は、使用後は周辺をさっと水流し、できれば拭き取りましょう。化粧品やシャンプーなども、犬猫が簡単には届かない様、棚や収納を活用しましょう。

そして、飼い主さんがそれらを使った(体に塗った)後も配慮すべきです。最近、獣医師から整髪料についての注意喚起がありました。育毛剤の成分「ミノキシジル」は、犬や猫などのペットがなめると、心不全を起こし命に関わるリスクがあると報告※があったためです。ミノキシジルは日本でも育毛剤や整髪料、育毛シャンプーに使われています。頭を拭いたタオルにも育毛剤の成分が残るため、シャンプーした後は乾かすときに使ったタオルも、すぐに洗った方が良いようです。頭を載せる枕にも成分が残ります。飼い主さんの臭いを求めて、犬や猫が枕に触れたり舐めることも多いので、育毛剤を使用している飼い主さんは、犬猫の寝室への出入りは注意が必要となります。

その他、湿布薬はもちろん薬剤ですし、ハンドクリームや化粧品も、犬猫には毒となる成分が香りづけとして配合されていることがあります。また、コロナ禍でアルコール消毒をすることが日常化しましたね。こういった薬を使用した手で、時間を置かずに犬や猫をさわれば、体についた薬を犬猫が舐めて、口から取り入れるといった危険性があります。体に塗るような薬を使った場合、ある程度人が経皮吸収するまで時間を置き、その後、表面に残った薬成分を洗い流してから、犬猫に触れるようにした方が安全でしょう。

育毛剤や化粧品も舐めると危険
ハンドクリームなど猫が舐める危険

犬猫がいる家庭で洗剤や化粧品を使う際に、安全のために守りたいこと

  • サプリメントも医薬品と同じく、犬猫が触れないよう収納する。
  • アロマオイルは焚かない。(加湿器は、アロマオイルを添加して使わない)
  • 悪臭による空気汚染には、消臭材やアロマと言った香り付けで対処せず、「通気」「換気」を行う。
  • お風呂場・洗面所には、犬猫が入れないようにする。
  • 化粧品・シャンプーなどは、できるだけ収納する。
  • 整髪料・育毛剤は毎回必ずしまう。
  • 整髪料や育毛剤・育毛シャンプーを使ったら、頭を犬猫に触らせない・なめさせない。
  • 整髪料や育毛剤・育毛シャンプーを使う場合は、犬猫を枕に近づけない。(寝室にいれない)
  • 育毛シャンプーを使う場合は、頭を拭いたタオルはすぐに洗濯する。
  • ハンドクリームなど塗り薬剤を使った後や、整髪料・育毛剤を塗った後は必ず手を洗う。

※出典: Kathy C. Tater, Gwaltney-Brant, et al : Topical Minoxidil Exposures and Toxicoses in Dogs and Cats: 211 Cases (2001–2019), Journal of the American Animal Hospital Association, 57(5), pp. 225-231,2021.

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)