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  3. 第86回 犬の居場所と在宅勤務(前半)

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.86

犬や猫と共に暮らすためのアイデア

犬の居場所と在宅勤務(前半)

日本では2020年の春ごろから、コロナ禍の影響で在宅勤務・在宅授業が推進されるなどして、生活スタイルが社会的に(世界的にも)大きく変わったようです。コロナ禍が去っても、生活は以前と全く同じとはいかないでしょう。

家族が集まって自宅で過ごすのは、絆を確認できた反面、密な関係に困惑する状況も出ました。物理的にも、全員が家で作業(仕事・勉強)をするには、作業スペースの確保という課題が起き、苦労されたご家庭も多かったでしょう。緊急事態宣言で人が自宅仕事をする状況化で、私のところに寄せられた相談からは、犬や猫達にとってのコロナ禍に生じた課題は2つあったようです。

コロナ渦に生じた課題

一つは、日中ゆっくり休めなくなったこと。コロナ禍以前に確立されていた犬猫の生活リズムが崩れてしまったようです。日中の人の不在時は、犬や猫はお留守番しながら静かにゆっくり休む時間だったのです。犬はちょっぴり嬉しかったかもしれませんが、猫は窮屈だったようですね。

もう一つは、リモート会議での人の不思議な行動に戸惑ったようです。画面に向かって話す人の声は、いつものお家での会話の声ではありません。はっきりと大きな声です。犬や猫たちは「どうしたの?!」と慌て、また戸惑った様子が見られました。

戸惑う生活にも、2週間もすると犬猫は環境に慣れてきます。ところが、緊急事態が一段落すると、人はまた仕事や学校に出て行くようになります。ここで、犬では「分離不安」という新たな課題に直面したご家庭も少なくなかったようです。

コロナ渦で私達に起きた生活環境の変化

そこで、上手に犬とのアフター・コロナを迎えるために、コロナ禍で私達に起きた生活環境の変化を、前期のA(在宅時間が急に増えた)、中期のB(在宅時間が長くなっている状況)、後期のC(コロナ禍が終息して、在宅時間が減る)の3つの期間に分けて整理してみました。それぞれの期で起きた事を振り返り、これから起きると考えられる事について考えてみましょう。

・前期A: 家族と犬がずっと顔を合わせる状況となり、犬の生活リズムが崩れたり、興奮させてしまったりする状況が増えた。

・中期B: 家族がいつも居る状況に慣れ、人がいつも側に居るのが当たり前になった。犬が人に甘える機会も時間も増え、要求吠えという「無駄吠え」が増えた。

・後期C: コロナ禍が終息(一段落)して、人は日中の活動を職場や学校へと戻す。家族が急に不在がちになったような状況で、寂しさや不安を覚え、慣れるまでの数週間で、吠えたりモノを壊したりという「分離不安」による問題がおきる。

中期Bでは、過度な甘えや要求の問題、そして、中期Bから後期Cへとの移行時におきる「分離不安」という2つの課題があるわけです。この2つの課題を乗り越えるには、家族が自宅にいる状況でも、人が勉強や家事といった「仕事」を終えるまで、犬は邪魔せず待てるようにするという、「疑似お留守番」ができるようにトレーニングすることが効果的です。家庭でのトレーニングを効率よく行うのは、しつけテクニックではなく、住まいの環境整備です。「疑似お留守番」トレーニングを、犬にも人にも負担なく行うために、リビングなど家族空間とハウスという犬の居場所の、適切な位置関係などを見直し、在宅勤務に対応した状況にしましょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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