1. 犬家猫館.com
  2. にゃるほど犬猫塾
  3. 第85回 人も動物も幸せであるために

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.85

犬や猫と暮らすということ

人も動物も幸せであるために

アニマルウェルフェア

私たち人類の歴史と共に歩んできてくれました動物たちは沢山います。

人の社会に引き入れ帰る自然を失わせた犬猫たちだけでなく、人の健康や食の安全、動物たちの福祉についても考慮した世界共通の「5つの自由」が提唱されています。

この内容は生きるもの全てに適応される大切な定義と考えます。

日本では「動物福祉」と訳されるアニマルウェルフェアですが、1924年に設立された、動物衛生及びズーノーシス(人獣共通感染症)に関する国際的な基準を策定する国際機関国際獣疫事務局(OIE)において「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。

アニマルウェルフェアを知るうえで、重要なのが基本の「5つの自由」です。

「5つの自由」の内容は以下の通りです。

  • ① 飢えや渇きからの自由(Freedom from Hunger and Thirst)健康維持のために適切な食事と水を与えること。
  • ② 不快からの自由(Freedom from Discomfort)温度、湿度、照度、など、それぞれの動物にとって快適な環境を用意すること。
  • ③ 痛み、外傷や病気からの自由(Freedom from Pain, Injury or Disease)怪我や病気から守り、怪我や病気の場合には十分な獣医療を施すこと。
  • ④ 本来の行動がとれる自由(Freedom to behave normally)各々の動物種の生態・習性に従った自然な行動が行えるようにすること。群れで生活する動物は同種の仲間と生活する。単独で生活する動物は単独で生活できる。
  • ⑤ 恐怖や抑圧からの自由(Freedom from Fear and Distress)過度なストレスとなる恐怖や不安を与えず、それから守ること。動物も痛みや恐怖、苦痛を感じることを理解し、肉体的な負担だけでなく精神的な負担もできうる限り軽減すること。

これは、1960年代の英国で、家畜に対する動物福祉の理念として提唱されたものですが、現在では伴侶動物をはじめとする人間と関わる全ての動物の指標になっています。

日本でも近年、この考え方が浸透してきて、本来の自然に近い環境で飼育する牧場や野生に近い生活環境に配慮する動物園や水族館も増えています。動物のウェルフェア水準の向上のためには、より多くの資金が必要なのにも拘わらずアニマルウェルフェアを大切にする施設が増えているのはとても嬉しいことです。

私たちも人の命を支えてくれる動物たちが育っていた環境、そこに関わる方々のご苦労や、動物園や水族館で動物たちのためになされている配慮、絶滅危惧種の繁殖の役目など、表に出ない取り組みなどにも心を寄せ、人と関わる全ての動物たちの幸せな生涯を考えていきたいと思います。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)