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  5. 第93回 伴侶動物との暮らしの効果|犬家猫館(イヌヤネコタチ)

柴内先生の にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.93

犬や猫と暮らすということ

伴侶動物との暮らしの効果

伴侶動物の筆頭である犬と猫は私たちの暮らしの身近で暮らし常に共に人生を歩む大切な存在です。

この9月に私が属する(社)日本臨床獣医学フォーラムの年次大会の26回目大会がホテルニューオータニ(東京都千代田区紀尾井町)で開催されました。この折り、国立研究開発法人国立環境研究所の主任研究員谷口優博士の御講演を頂きました。

人と伴侶動物が共に暮らすことの効果は世界的には様々な報告が成されています。有名なものでは1980年のエリカフリードマン博士による心臓発作経験者の1年後の生存数が伴侶動物と暮らしている方とそうでない方で異なるというものなどがあります。(動物と暮らす人の生存の数の方が有意差をもって多いという結果でした。)しかしながら、日本国内での調査はとても少ないのです。

その中で谷口先生は日本国内での何年にもわたる研究を通じて幾つかの結果を示してくださいました。簡単にまとめますと

  • 犬と生活しているシニアは要介護認知発症リスクが40%低い
  • 犬と生活している人は死亡リスクが23%低い
  • 犬と生活している人は脳年齢が最大15歳低下する可能性あり
  • 犬と生活している人は介護保険料使用が40%少ない

犬との生活は犬との散歩による運動が上記結果の要因ではないかという見方がありましたがそれも研究によって運動だけをしている事とは異なる要素があることもわかっています.猫との暮らしにも精神面で生き甲斐のある生活が送る事ができるということを示した別研究もあります。

私たち伴侶動物の診療を行っている獣医師は様々なご家族(患者さんである伴侶動物の人のご家族)との対話をもって伴侶動物の状態をより良く知る必要があります。その分動物を介して人間との対話がとても重要な仕事なのです。高齢の皆様との対話の機会も多くあります。その中である程度の年齢になったらもう、伴侶動物とは暮らせないのではないかという心配と憂鬱をもっておられる方も少なくありません。当院では15年ほど前から70歳からパピーとキトンと暮らそう!キャンペーンをしております。そうした暮らしを始めるためにはクリアしなくてはならないことは複数あり、何もかもがワンストップで解決できるわけではありませんが、社会や周囲の友人知人、動物病院の主治医,家族、行政などのネットワークの力を結集させれば、高齢期に伴侶動物と暮らし生き甲斐をもって毎日を暮らす事はできると思います。海外の例ではありますが、高齢者が動物と暮らす事を何人たりとも妨げてはいけないという条例がある場所もあります。日本の高齢者人口はこれから増大していきます。若い世代のためにも高齢者の自立と社会参加、健康寿命が長いことが社会に貢献する大切な要素です。そのためにも現在43兆円に昇る日本の医療費や介護保険料が犬と人が暮らすことで減じられるとしたら、素晴らしいことではないかと心から思います。

伴侶動物:Companion Animal
日本ではもともと愛玩動物と呼ばれてきた犬や猫を筆頭とする動物達が昨今では「伴侶動物」と呼ばれるようになってきました。記事No37ですでにテーマとして取り上げられていますのでそちらもご一読くださると良いと思います。

伴侶:人生を共に歩む相手 です。
人と動物の絆:Human Animal Bond
人と動物が共にあることで双方が幸せになれる事

著者友人の砂田貞枝さんとぴょんたちゃん

profile

柴内晶子先生(獣医師)

赤坂動物病院 院長

伴侶動物医療の現場で、「人と動物の絆」〜Human Animal Bond〜を大切にした診療を行っている。 (公社)日本動物病院協会のアニマルセラピー活動であるCAPPへの参加推進を行い、社会活動として東京青山ロータリークラブでのアニマルセラピー活動を通じた社会奉仕活動を定期的に実施。心の窓をひらく「じっとみて」ワークショップには、未来育ティーチャーとして参加している。 日本大学では、非常勤講師として獣医倫理福祉の講義を行う。 様々な獣医事関連の委員会活動に従事し、日本大学外科学研究室の学部研究生として獣医再生医療にも積極的に取り組んでいる。