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にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.84

犬や猫の安全と危険回避

言葉で飼い主の名前や住所を伝えられない家族(犬、猫たち)のために

本誌、2020年11月の第78回「『動物の保護及び管理に関する法律』の改正について」でもお伝えした、マイクロチップは本年6月から実施されていますので、今回は少し詳しく説明したいと思います。 2022年6月1日から犬、猫に対するマイクロチップ装着に関する制度が施行されました。 マイクロチップは直径2mm長さ10㎜程度の円筒形の電子標識器具です。その中には、個体識別番号が記録されており、その番号は専用のリーダーで読み取ることが出来ます。専用リーダーは全国の動物愛護センターや保健所、動物病院などに置かれています。 残念ながら干支にはいない猫ですが、今や日本での飼育頭数は戌年のある犬を上回っています。(一般社団法人ペットフード協会調べ) 今回の改正では、犬や猫を販売する事業者(ペットショップ、ブリーダー)には、マイクロチップの装着が義務付けられました。皆さんが今後、ペットショップやブリーダーから新たに家族としての犬や猫を迎え入れた場合には、マイクロチップが装着されています。その場合迎え入れてから30日以内に事業者から受け取った「登録証明書」の所有者情報の変更登録を指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会に申請します。 既に犬や猫と暮らしている方には、マイクロチップを装着するよう努めること(努力義務)が規定されています。動物病院でマイクロチップを装着した時は、30日以内に獣医師から発行された「マイクロチップ装着証明書」でマイクロチップの情報、所有者情報などを指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会に登録します。また、発行される「登録証明書」は登録した内容が変更になった場合(引っ越しで住所が変わった時など)の届け出の際に必要です。

マイクロチップの装着について

さて、マイクロチップは犬や猫の背側の皮下に獣医師が専用のやや太めの注射器で注入(装着)します。痛みがあるのでは?と心配される方もあると思いますが、ワクチンなどの注射と同じで、飼主やアシスタントが、犬や猫の気をそらしてあやしながら装着すれば、犬や猫に大きな負担を感じさせることはありません。まだマイクロチップが注入されていなければ、不妊や去勢手術の折に麻酔下で注入するのもよいでしょう。 また、体内に異物を注入することに不安を感じられる方もあるかもしれません。国内でマイクロチップが装着されるようになって20年以上が経過していますが、公益社団法人日本獣医師会の調査によると副作用やショック症状等についての報告はなく、諸外国においても副作用の症例は殆どなく、安全性は高いと言えます。

マイクロチップの意義

マイクロチップには、国コード、動物種コード、メーカーコード、個体番号が組み合わされた世界で唯一の個体識別番号が標識されていますので、犬、猫以外の動物にも広く活用されています。 データは公益社団法人日本獣医師会のデータベースで管理されていますので、犬が様々な理由で行方不明になったり、猫が外に出てしまった時など、マイクロチップが装着されていれば、保護された先でリーダーで読み取り、公益社団法人日本獣医師会のデータベースに照会することによって、飼い主さんに連絡することが出来ます。自分で住所を伝えられない動物たちの外れることない迷子札です。 大地震などの災害時に万が一離れ離れになってしまった時の身元の証明にもなります。 「また、動物を連れて海外を移動する際には、様々な動物検疫の規則に従わなくてはなりません。海外でもマイクロチップの装着を義務化している国も多く、日本では「犬等の動物を日本へ輸入する場合」にはマイクロチップの装着が義務化されていますので、動物を連れて海外へ出て戻ってくる際には、マイクロチップが装着されていないと入国出来なくなります。これらの条件は国によって異なりますので、十分調べて準備することが大切です。 マイクロチップは、動物たちの命をつなぐ家族としての絆です。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)