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にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.83

犬や猫と暮らすということ

野生の猫

身近な存在である猫

今年は寅年、動物の虎はご存じの通りネコ科の動物です。猫が十二支にいないのは、神様が「元旦に一番早くあいさつに来た動物から12番目の動物までを干支にする」と言ったところ、ネズミが猫に「2日の朝にあいさつをすれば良い」と嘘を教えたので、十二支に入れなかった。というお話を聞いたことがありますが、寅をはじめ十二支の漢字は、もともとは動物とは関係なく、覚えやすいように後から動物を当てはめるようになったそうで、猫が十二支にいないのは、ネズミさんが嘘を猫に教えたからではなかったようです。残念ながら干支にはいない猫ですが、今や日本での飼育頭数は戌年のある犬を上回っています。(一般社団法人ペットフード協会調べ)

日本に生息する野生の猫

虎はネコ科の動物ですから、広義に考えて野生の猫と言えるのかもしれませんが、分類では猫(イエネコ)とは遠い種類です。私たちが共に暮らす猫はリビアヤマネコ(ヨーロッパヤマネコ)が家畜化されたイエネコです。 日本にいる野生の猫は、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコです。イリオモテヤマネコは西表島だけに生息するベンガルヤマネコの亜種で、ツシマヤマネコは対馬だけに生息するアムール猫の亜種で、外見は似ていますが、その祖先は別の種類で別のルートから渡って来たと考えられています。共に絶滅危惧種であり、国の天然記念物に指定されています。

絶滅の危機に瀕する野生の猫たち

日本に生息しない野生の猫でも、その中の何種類かは動物園で見ることが出来ます。 「砂漠の天使」とも言われるスナネコは、アフリカの砂漠地域に生息する最小クラスの野生ネコで日本の一般的な猫と比べても小さい猫種です。耳道に砂が入るのを防ぐため、耳の内側には長い毛が生えています。足裏も肉球の間から生える長い毛で覆われ、砂漠の熱い砂の上を歩くことが出来ます。 「最古の猫」とも言われるマヌルネコは中央アジア周辺の乾燥した高知の岩場や平坦な草原に生息し、大きさは一般的な猫とほぼ同じです。夏は酷暑、冬は氷点下という過酷な環境で生息しています。岩陰から獲物を狙うために耳が目立たないように低い位置に丸い小さい耳を持ち、目は水平につき、寒さに適応出来る深い毛を持っています。イエネコの含まれる系統とは初期に分岐した種とみなされていて、ネコの多くは瞳孔が縦に収縮しますが、マヌルネコは丸いまま収縮します。永久歯も一般的な猫が30本なのに対して28本です。また、生息地が高地のため病原菌が少なく、免疫力が低く感染症に弱いため飼育下での繁殖が難しく将来絶滅の危険性の高い野生希少動物とされています。 その他にも何種類かの野生の猫を日本の動物園で見ることができます。 猫(イエネコ)とは異なる容姿や生態を持つ野生の猫の多くが、生息数が減少して絶滅の危機に瀕しています。その原因は生態系の乱れや乱獲で、人間に責任があります。一方魅力的な野生の猫が絶滅しないように守ることが出来るのも私たち人間です。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)