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  3. 第73回 猫の腎臓疾患について

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.73

犬や猫の健康管理

猫の腎臓疾患について

猫と暮らす皆さん、腎臓病を理解して長寿を支えて下さい

高齢猫の多くが腎臓疾患を抱えるといわれますが、なぜ猫に腎臓病が多いのでしょうか?

猫は、本来砂漠の動物(リビア砂漠等)小さなネズミ(痩せたネズミ)などをやっと捕らえて食べて生きていた動物です。

腎臓には食物を消化吸収した血液が送られ、濾過して良いものを再吸収し、不要なものを尿と共に体外に出す重要な役割をしています。少量の水分で老廃物を濾過して水分を捨てないように尿を作り排泄する動物ですから、尿を濃縮するために腎臓は大きな働きを要求されています。猫の腎臓はそれに答えるだけの非常に高い処理能力を持っています。

このように過度な負担に耐えて生きてきた猫が次第に人と暮らすようになり、食物も環境も改善され、野生では考えられない程の高齢まで生きる様になったことが、腎臓病の多い原因と考えられます。

また、犬に比べて腎臓の濾過装置である糸球体、尿細管の数が少なく、飲水欲が低いことなども一因と言われています。

15才以上の猫の81%、18、19才になるとほぼ100%の猫が腎臓病とも言われています。

腎臓が正しく機能しなくなってくると、どんな症状が現れるのでしょう

腎臓の働きは、

  • 老廃物を血液の中から濾過して体外に排出する
  • 体内の水分や成分のバランスをとる
  • 骨代謝、造血に関係するホルモンを作る
  • 血圧の調節

などがあり、老廃物が体に溜まると、元気消失、食欲低下、脱水、体重減少、更に激しくなると、尿毒症になり、嘔吐や多飲、貧血、神経症状など、多臓器不全等を引き起こし、治療に反応出来なくなると死に至ります。

腎臓病になっても良い時間を過ごすために出来ること

腎臓は再生しない臓器です。腎臓病を治すことは出来なくても、早期発見し、進行を遅らせ、症状を和らげるために御家族が出来ることも沢山あります。

  • 誕生日健診や7歳から初老検診をして早期発見をします
  • 住環境を整える
    • 水飲み場を多くする、常に新鮮な水を準備する。動く水(流れる水)を好む猫も多いので工夫をしましょう。水面が広い器を使う(ヒゲが当たらないように)
    • トイレの充実(1頭に2ヶ所)
  • 良質のフードを選び
    • 療法食やウェットタイプの食事(水分含量70~85%)を与える
  • 遊びやブラッシング、体のマッサージなどで活気のある生活を支える

自宅での皮下点滴はとても有効です

脱水が進み、自分の力で水分を維持出来なくなるので、点滴はとても大切です。動物病院で診断を受け、点滴が必須であると分かった時、通院が猫にストレスをかけてしまう場合は、動物病院で皮下点滴の量や方法を指導してもらい、自宅で行うことも可能です。

「自分で行うのは少し不安」と思われる方もいらっしゃると思いますが、患者御家族の中には、6年間も自宅で皮下点滴を続け、腎臓病がありながら、20才を迎えた猫さんや、2頭の猫を上手に膝に乗せ、順番に皮下点滴をしているケースもあります。

飼い主家族が自宅で皮下点滴をして下さることは、猫にとって幸せだと思いますが、必ず定期的に血液検査等のリチェックを受けて皮下点滴の量が適量であるのかを確かめて下さい。

猫は自然界から人類が人間の社会、家庭に引き入れた動物です。

私たち飼い主には、猫が築き上げてきた長寿を支える環境をととのえてあげる責任があります。

猫は体調の変化などを表現しにくい動物です。誕生日健診、初老検診を定期的に行って、早期に可能な手当を始めてあげましょう。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)