Story 12 ワックスメンテナンスを不要に
「NW」「NW-EX」

“ワックスメンテナンスが不要”により
ビニル系床材の業界に衝撃を与えた
「NW」「NW-EX」の開発ストーリーです。

ワックスメンテナンスを不要に
ノーワックス技術の開発

医療福祉施設や商業施設など、さまざまな空間に敷設されるビニル系床材は、床材の表面にワックスを塗布することで美観を維持します。ただワックスメンテナンスは、“什器を移動して古いワックスを剥離→乾燥→新たにワックスを塗布→乾燥→什器をもとに戻す”を定期的に行わなければならず、建物の管理者にとって時間と労力、そしてコストがかかる作業です。このようなワックスメンテナンスを不要(ノーワックス)にするために、東リは防汚技術の開発に取り組んできました。
ノーワックス技術の原点は、1984年に発売したビニル床シート「サーカンスフロア」にさかのぼります。サーカンスフロアは、東リで初めて表面にUV樹脂コーティングを施し、防汚性能を付与した製品です。しかし、当時の防汚性能は“初期汚れ防止”であり、“ワックスメンテナンスが不要”ではありませんでした。
その後も防汚技術の開発は続き、“ワックスメンテナンスを不要に”を目標に、UV樹脂コーティングの材料の配合等を徹底的に研究しました。そして2009年、ついにワックスメンテナンスを不要にする技術を確立し、ビニル床シート「ノンワックスリューム」を開発・発売しました。当時「ノンワックスリューム」は画期的であり、ワックスメンテナンスの時間・コストの削減とともに、洗浄時の廃水が出ない環境にやさしい製品として、高く評価されました。

「NWシリーズ」の誕生

「ノンワックスリューム」の発売を機に、既存のビニル床シートにもノーワックス技術を展開させ、「NWシリーズ」をブランド化する構想を練りました。
大きなコストアップをせず、製品ごとの機能や性能を維持したまま、様々な製品をNW化することは容易ではありませんでした。既存品の改良でありながら、新製品の開発に限りなく等しい時間と技術力を要しました。研究開発部門の技術力を結集し、より多くの製品に対するNW化実現を目指しました。
2012年、「ホスピリューム」や「SFフロア」などのビニル床シート約10商品をNW化し、医療・福祉施設市場を中心に拡大していきました。医療・福祉施設は24時間使用されるため、什器の移動や換気・乾燥といった養生が必要な定期メンテナンスを行うタイミングが少ないことから、従来よりノーワックス製品への期待が大いにありました。業界に先駆けて多くの商品をNW化し、“ワックスがけのメンテナンスが不要”というシンプルな特徴で、「NW」の知名度は一気に上昇しました。

「NW」の防汚性能をさらに進化させた
「NW-EX」の誕生

ビニル床タイルにもノーワックスのニーズはありました。しかし、路面店など使用状況が過酷な場合があり、ノーワックス化には過酷な使用環境に耐える耐久性が必要でした。
まずノーワックス化に取り組んだのは、ワックスメンテナンスが不向きな置敷きビニル床タイル「ルースレイタイル」です。「ルースレイタイル」はOAフロア上に敷設されることが多く、ワックスメンテナンスをした場合、二重床の下にタイル目地からワックスが漏れてしまうなどの課題がありました。しかし、UV樹脂コーティングによる防汚性能を付与する開発を行いましたが、製品の反り・割れなどが発生し、難易度の高い取り組みでした。試作を重ねた結果、まずはNW化に成功し、次いで高耐久のノーワックス性能「NW-EX」を確立、2016年には高性能なNW-EX仕様の「ルースレイタイル」を発売しました。
そして2019年には、ルースレイタイルよりも薄い3mm厚タイルのNW商品を高性能なNW-EX化することにも成功し、「イークリンシリーズ」として発売しました。3mm厚タイルでは、ルースレイタイルよりも製品の反りや寸法安定性に影響が出やすく、さらに過酷な使用環境に耐えることができるコーティングの開発が必要でした。無数の試作の中から最適なバランスを探り、品質と防汚性の両立を実現しました。

「NW-EX」の意匠性を高める
高防汚と“低光沢”の両立

一方で、市場では木目の需要が高まっており、それにともなって低光沢な質感が求められるケースが多くなってきました。
ただ、光沢を下げるためには表面に細かな凹凸をつける必要があり、防汚性能という観点では、より汚れやすくなる構造になります。そのため、防汚性と低光沢の両立は非常に困難な研究テーマでした。試行錯誤の末、2019年に低光沢と高防汚を両立させ、ルースレイタイルとイークリンのNW-EX仕様の低光沢化に成功しました。

「NW」「NW-EX」は、製品ごとで異なる特長や性能、用途に合わせて様々な工夫を凝らしています。今後は、“ワックスメンテナンスが不要”から、“そもそも汚れない”という理想に向けて、防汚技術に対する研究開発を続けてまいります。

掲載日 2023.09.28