Story 09 | 「タフテックタイル」
より美しい貼り上がりの床タイルを求めて。
高い技術力と開拓精神を結集した
「タフテックタイル」の開発者インタビューをご覧ください。
開発の始まりは2003年
タフテックタイル開発の始まりを、旗振り役を担っていた取締役専務執行役員の天野が振り返ります。
- 天野:
- 「2003年頃、食品スーパーマーケットやコンビニエンスストアといった、東リが得意とするビニル床タイルが使われてきた市場に、セラミックタイルが置き換わっていくのを目の当たりにしていました。その市場を奪還できる製品を開発したいという強い思いはありましたが、具体的な開発には至らない時代がしばらく続きました。市場ニーズの具現化はとても難しいテーマであり、本格的な開発が始まったのは2015年でした。」
開発責任者である技術開発部部長の竹川には、とても重いテーマとなりました。
- 竹川:
- 「この開発テーマには、社内に先人がいました。従来のビニル床タイルは、柔らかいため施工性が良く、内装技能士が貼りやすいという大きなメリットがありますが、特に改修現場の場合で下地がきれいに処理されていないところに施工すると、床の凹凸を拾ってしまい美しく仕上がらないところが弱点です。以前から、とても硬いタイルをつくれば凹凸を拾わずにフラットな仕上がりになることはわかっていました。しかし、実際に硬いタイルを試作し施工すると、不陸は拾いませんがタイルごとの目地段差が大きくなってしまいます。タイルを接着する糊の厚みで調整しようとしましたが、タイルの目地から糊がはみ出してしまいました。」
2015年、研究開発の新テーマ
「セラミックタイル対抗床材」プロジェクトが始動
2003年から長い月日を経て、2015年にスタートした中期経営計画『SHINKA-100』の「セラミックタイル対抗床材」開発プロジェクトが天野の指揮のもとにスタートしました。プロジェクトの目標は、2003年から抱く信念を貫いたものでした。
現状のビニル床タイルはセラミックタイルに敵わないが、セラミックタイルの良いところを追求し、セラミックタイルの弱点を補うような製品ができれば、市場を奪還することができるのではないか。
コストダウンへの挑戦
初めての試作品は、現在のタフテックタイルの2倍ほど分厚い6mm厚で、コスト面が課題でした。セラミックタイルに奪われた市場を奪還するには、さらなるコストダウンを図らなければなりません。タイルを分厚くしたのは不陸を拾わずフラットな仕上がりにするためでしたが、コストダウンをするためには薄くする必要がありました。「薄くて、不陸を拾わない」ビニル床タイルは、これまでの常識では考えられませんでしたが、技術力を結集し試行錯誤を重ねた結果、実現することができました。
この取り組みは、タイルの軽量化につながったほか、セラミックタイルでは難しい既存床への重ね貼りも可能とし、工期短縮と施工費抑制にも貢献できるようになったのです。
タイルサイズを検討中に、
チャンスが舞い込む
東リでしかできないものを作りたい。当時の市場では、サイズが大きいタイルの人気が出始めていました。国内の生産ラインだけでは大きいタイルの製造が難しいのですが、“新たにグループ会社となった海外生産工場に一部工程を委託することで、600mm角のタイルが安定して生産できる!”と思い立ちました。
しかし、海外生産工場とのコミュニケーションは苦労が絶えませんでした。2020年からコロナ禍で現地に行くことができず、オンライン会議でプロジェクトを進めることになったのですが、海外と日本では考え方や文化が違うため、コンセンサスをとる難しさを身をもって知る経験となりました。
開発者のこだわりが詰まった、
高耐久の防汚層
東リでしか作れない機能性として、防汚層に高い耐久性を持たせたい、譲れないこだわりがありました。当初は“これまでに培った技術で防汚層を作るだけ”と考えていましたが、工場の生産ラインで試作すると、空気が入ったり塗りムラができたりと、安定した層ができませんでした。材料の選定から塗り方に至るまで、考えられるだけのパターンを朝から晩まで繰り返す日々が続きます。土足で使用する製品ですが、マイクロメートル単位のとても精密な作業を行いました。
貼り映えが命。入念な施工検証
製品が完成に近づいたころ、さまざまな現場で試験施工にご協力いただき、10件ほどの実績を積み重ねました。“新しい床材”ということもあり、内装技能士に受け入れられないのではないか、こんな製品は施工できないと言われないか、などといった不安がありました。あらゆる課題に対して解決策をしっかり用意したいという思いで、ひたすらに現場検証を続けました。試験施工初期には、製品検査で何も問題がなかった試作品が、時間が経つと反ってしまうこともありました。
多くのお客様にご協力いただいた結果、自信をもって提供できる製品が完成しました。気がつけば開発を思い立ってから、約20年という月日が経っていたのです。
新たな価値の創造へ、挑戦し続ける
さまざまな困難を解決し完成した「タフテックタイル」。エンボス加工で表面に凹凸をつけていないのは、 “高耐久の防汚層”を安定して作るための工夫です。表面に凹凸をつけると、足で触れやすい凸の部分の防汚層が薄くなり、早く摩耗してしまうのです。しかし、リアリティのあるテクスチャーを表現するための凹凸のある意匠が今後の課題であり、エンボス加工を施しても高耐久の防汚性能が保たれる製品の実現を目指しています。開発の手を休めることなく新たな価値の創造へ、東リは挑戦し続けます。
掲載日 2022.11.25