Story 07 「バスナシリーズ」

既存の浴室床を『壊さずにリフォーム』できる「バスナシリーズ」
毎日使う浴室・浴場の床には、硬い・冷たい・滑りやすい…など、
さまざまな問題を抱えるケースがあります。
工期や費用を抑えながら浴室の床を簡単にリフォームできる画期的な商品を
業界に先駆けて開発し続ける進化がここにあります。

浴室向けリフォーム床材という、
大きな課題をクリアした東リ

バスナシリーズ」は2011年から発売している浴室・浴場用のビニル床シートです。「バスナシリーズ」を発売する以前、常時温水を使うところはトラブルが多いとされる部位で、浴室や浴場にビニル床シートを施工することは一般的ではありませんでした。
製品の開発は、社員が石造りの大浴場を利用した際に危ないと感じたことがきっかけです。滑りやすく転倒した際にケガの心配があり、みんなが安心して利用できる浴室づくりができないかと考え、ビニル床シートでの開発を目指したのです。
また従来の浴室・浴場の床リフォームには、既存の浴室の床仕上げ材を取り除いて新たな床下地を施工するためにまとまった費用と工事日数が必要であることが多いため、日常生活の中でリフォームすることに高いハードルを感じる人もいました。そこで開発当時掲げた理想は、これまでより扱いやすい材料と施工方法で、工期や費用を抑えながら快適な浴室空間を実現すること。これまでにないビニル床シートの開発を実現するため、機能性や意匠性、施工性など多くの課題をクリアして完成した「バスナシリーズ」は、既存の浴室の床を壊さずにリフォームができる画期的な商品となりました。発売以来、順調に売り上げを伸ばしていき、住宅、医療・福祉施設、宿泊施設、スポーツ施設など、新築・リフォーム問わず大小さまざまな浴室に採用されています。

2020年、飛躍的な進化を遂げる

発売から約10年。広く世間に認知されたことで、より快適な機能性への改良や新柄・新色発売の要望が増えました。さらに昨今のDIYブームも重なり、簡易施工の要望も多く寄せられたことで、機能性・意匠性の向上、そして簡易施工への挑戦が始まりました。

機能性

浴室は毎日使うところなので、日常のお掃除の負担をもっと軽減させたい。東リ独自の表面コーティングと凹凸形状の開発により、従来に比べてメンテナンス性と使用後の床面が早く乾くよう乾燥性が向上し、お客様のニーズにお応えすることができました。そして発泡倍率や表層を改良することで断熱性や転倒時の衝撃吸収性、防滑性を高め、浴室の安全性が高まりました。特に断熱性の向上によるヒートショック対策については、磁器タイルの床から変更されたお客様を中心に高い評価を得ています。
これら性能面の向上は数値で検証するのが一般的ですが、開発担当者には「検証結果だけではなく実際に使用した時の快適さにつながらなければ意味がない」という信念がありました。従来品が施工されている現場の近くに用事があればそこで入浴し、実際の使用状況を確認しました。社内の浴場には試作品を試験施工し、実際に洗剤がついても滑らないか、などの体感を大切に改良し続けました。それらの繰り返しで、自信をもって発売することができたのです。
また、リフォームのしやすさにも配慮しました。バスナリアルデザインでは、従来厚みが4.0mmあることでリフォーム後にドアを開閉すると床材がつかえてしまうケースがあるという課題がありました。これまでの製法で厚みを抑えると、衝撃吸収性能が低下してしまいます。厚みを0.5mm薄い3.5mmにチャレンジし続けた結果、同時に衝撃吸収性能を向上させることに成功しました。

意匠性

これまで紹介した形状や機能性を満たす商品の構成では、表面の凹凸や色柄などの制約が多くありました。そのような状況でも特性を熟知した社内デザイナーが、これまでよりも幅広く高級感のある意匠のラインアップを目指しました。
柄については、住宅や店舗などといったインテリア空間のようにコーディネート性の高い浴室を実現するため、ピンクやブルーのガラスタイルをイメージした「カラータイル」や、インテリアトレンドである「テラゾー」など新たな柄を投入し、浴室コーディネートの幅を広げるラインアップにしました。
お客様へ試作品をヒアリングした際には、防滑性も必要だが、素足での歩行や膝をついたりするため怪我をしないかという点が重要視されました。そのためご自身の拳をシートにこすってエンボスの肌触りを判断されていたのは、その後の開発にとても参考になりました。また、大規模な集合住宅だと万人受けする意匠が大事とのことで、「一人の100点より、みんなの70点」を目指すことが必要とのご意見は、とても印象的で常に意識することとなりました。

施工性

これまでの標準施工方法は、2液タイプの耐湿工法用接着剤を床下地に塗布し、カットされたシートを貼り付けるという工法でした。もっと簡単にシートを貼る方法はないのかという要望に応えるため、「誰でも簡単に施工できる」をコンセプトに、吸着樹脂・吸盤・コーキング・両面テープなど様々な工法を試しました。コストを抑えつつ誰でも出来るという条件を満たしていたのが、両面テープによるテープ工法でした。
その中でも大きな課題であった接着性・耐久性、耐水(お湯)性に加え、テープの厚み・幅・粘着剤の設計などを一から確認。両面テープの貼り方・コスト・仕上がりのきれいさに妥協せず検証を続け、1年がかりで今回のテープ工法の開発に至りました。
実現場での施工検証では、東リ社員の協力を得て「自宅・実家・友人宅」などいろんな方々の協力を得ることができました。ご協力いただいた方々には感謝しかありません。本当にありがとうございました。

施工動画はこちら https://www.youtube.com/watch?v=H0c_nxKUVJU&t=3s

住宅からホテル、大きな浴場もおまかせ

バスナシリーズ」を発売して10 年。これまで住宅やホテル客室の浴室を中心に多くご採用いただいています。ホテルやスポーツ施設、医療・福祉施設といった大きな浴場やシャワー室での採用もあり、住宅から各施設まで幅広い浴室・浴場でご採用いただいています。
近年、浴室・浴場の清掃性や安全性に対する使用者の意識が高まっており、これに対応すべく浴室空間もめまぐるしく進化しています。このスピードに対応できるようバスナシリーズを進化させていくと同時に、ビニル床シートの特長をいかした機能、意匠、施工面の独自性を伸ばしていきたいと考えています。

【採用事例】
「障害者支援施設 小松陽光苑」
所在地:石川県小松市
施工:2020年11月

2020年グッドデザイン賞を受賞

2020年グッドデザイン賞の審査委員の評価におきまして、以下のコメントをいただきました。

浴室の床で滑って転ぶなどの事故や、高齢者のヒートショックが多発している。こうした現状から、近年浴室メーカーが転倒しても痛くない、温かく水切れがよいといった機能床をシステムバスで製品化しているが、これらの浴室を購入するとなると費用も高い。この製品は一般のリフォーム感覚で、安全で清潔な浴室機能床を手に入れられる点が評価できる。柄に関してはシート張りを感じさせない高級感のあるものを探求してほしい。

バスナシリーズ」が高い評価をいただき、2020年にグッドデザイン賞を受賞しましたが、コメントにあるように意匠面では課題をいただきました。
ライフスタイルをデザインする企業へ。自社の評価にとらわれることなく、お客様からのご要望に応え続けられるよう、日々の開発作業を邁進したいと思いす。

掲載日 2021.07.15