これからのスタンダードをつくる、それが東リDNA。

Story 04 新しい発想が詰まった国産初の本格的な単層ビニル床シート 『HITOE』シリーズ

高い機能性と意匠性を備え、発売間もなくから人気商品となった
国産初の本格的な高意匠単層ビニル床シート『HITOE』シリーズ。
開発物語の幕開けは、経営層の熱い思いからでした。

東リが『HITOE Fine』『HITOE Granza』を発売したのは2018年6月。瞬く間に評判は広がり、すでに多くの物件で採用されています。
単層ビニル床シートとは、その名の通り単層構造の床材。ポリ塩化ビニル(PVC)でつくられており、全層にわたって摩耗しても同じ柄が出現します。以前より、市場で評価を受けていた輸入品の単層ビニル床シートはありましたが、メイド・イン・ジャパン商品として本格的なラインアップに加えたのは、東リが初めてでした。
『あの頃、単層ビニル床シートをつくれるメーカーは、国内で私たち以外になかった』と口にするのは開発担当者たち。手探りの状態からすべてにこだわり抜き、東リの歴史に新たなジャンルを築いた紆余曲折のストーリーを語ります。

幕開けは、経営層の熱い思い。

単層ビニル床シートは海外ではメジャーな製品で、国内にも一定数のファンがいました。例えば病院や教育機関、空港などの施設です。ただ単層シートといえば、30年以上前から海外からの輸入に頼っており、それゆえの品質管理、発注からのリードタイム、輸入コストなどから、市場への広がりは限定的でした。
そのような状況の中、東リは創業百年を迎える中期経営計画『SHINKA-100』において、重点戦略の1つに「グローバル事業展開の拡大」を掲げました。その施策の1つとして単層ビニル床シートの自社生産、海外展開は必須であり、そのための生産技術の確立を模索していました。結果として、今ある生産ラインの改造により、国産初の本格的な高意匠単層ビニル床シート製造にトライしようと経営層が意思決定し、厳選されたプロジェクトチームがその実現に向け動き出しました。

海外展開を視野に入れた
社長の英断。

といっても、当時「あえて単層シートをつくらなくても良いのではないか」と否定的な声があったのも事実です。東リはすでに複合ビニル床シートで大きな市場を持っています。製品開発の決め手になったのは、永嶋社長の「グローバル戦略のために、東リならではの高品質な単層ビニル床シートが必要だ」というひと押しでした。メイド・イン・ジャパンの品質が国内外で高く評価される昨今、東リの技術力を詰め込んだ製品が完成すれば、ニーズを持つお客様は必ず注目してくれるだろうと。日本での市場が実際にどれほど開拓できるかは未知数でしたが、こうしてトップダウンによるチャレンジが決定したのです。

プロジェクトの船出は……曇天?

2017年に本格的に始動したプロジェクトは、順調な滑り出しとはいきませんでした。あらかじめ製造ラインの目処がついていたとはいえ、社内に単層ビニル床シートに明るい人材がいなかったのです。さまざまな知見を持つメンバーを集め、手探りの状態からスタートを切ることになりました。

「美」にこだわり抜いた
繊細な意匠。

開発を始めるにあたって、まずは柄の課題が持ち上がりました。東リでつくるからには、どこにでもあるデザインでは世に出せません。開発担当者がデザイン担当者と打ち合わせを重ね、みんなで案を練り、最終的に全員が納得したのが現在の『HITOE Granza』『HITOE Fine』です。『HITOE Granza』は単層ビニル床シートのオーソドックスな柄のように見えるのですが、空間にさりげない奥行きが出るよう、着色チップに半透明のチップを混在させています。また『HITOE Fine』は、無地調・極微細な柄、材質感、深みといったコンセプトで意匠開発を行いました。従来にない砂のような細やかな表情が特徴ですが、これは開発担当者の提案サンプルの中からデザイン担当者が新たな柄にふさわしいものを選出し、情熱をかけた努力の結晶。色見本を作成した後は、製造ラインで再現していくのですが、イメージ通りにいかないことも多々ありました。複数の単色素材の組み合わせで目的となる意匠を再現するのに、何百もの試作を重ね、発売に至るまで大変苦労しました。

熱意が導いた完成度の高さ。
決定した国内発売。

実はプロジェクト発足時、『HITOE』の存在はあくまで海外進出を視野に入れた開発で、必ず商品になるという保証はありませんでした。それがプロトタイプをつくったところ、独自性も品質も高いものができあがり「これはまず国内で商品化しないと」と判断され発売に至った経緯があります。プロジェクト開始から完了まで約1年。時間がない中、各地から集まったメンバーと忙しく走り回ったことが、すでに懐かしいような気がします。ものづくりへの情熱に満ちた、熱い現場でした。

新たなファン層の獲得から、
基幹製品へ。

おかげさまで2018年の発売早々に注目を集め、売上もかなり好調です。単層ビニル床シートの中では高級グレードにあたるのですが、それでも多くの方々にファンになっていただき、発売から1年強で追加カラーの発表までに至りました。特に意匠に関しては『HITOE Granza』も『HITOE Fine』も高い評価を受けています。2020年には製造ラインを強化することが決まりましたが、認知度が上がってきた今、まさに生産スピードをいかに上げていくかが課題となっています。いずれは本来の目的であった海外展開もにらみ、お客様の声を反映しながら改良していきたいですね。これまでの東リにはなかったカテゴリーの商品をつくったことで、より幅広いお客様のニーズに応えられるようになったことも『HITOE』の貢献だと考えています。東リの長い歴史を考えれば製品としてはまだまだ新入りですが、基幹製品になっていくことが期待されていて、プロジェクトメンバー一同とても誇らしく感じています。

掲載日 2020.08.20