Story 03 クリエイティブな現場を支える素材がある 梓設計本社「HANEDA SKY CAMPUS」

光と緑があふれるエントランスから続くのは、滑走路のようにまっすぐで長い通路。
先進的な試みを取り入れた梓設計の新オフィスには、東リの内装材が多く使われています。
クリエイティブの現場を支える東リ商品について、
新オフィスを設計した梓設計の斎藤愼一さんにうかがいました。

梓設計本社
「HANEDA SKY CAMPUS」

〒144-0042
東京都大田区羽田旭町10-11 MFIP羽田3F
https://www.azusasekkei.co.jp/

竣工:2019年8月
延床面積:5298.58㎡
階高:6.6m
構造:S造

新オフィス誕生の経緯を
教えてください

これまで2拠点に分散をしていた本社機能を一箇所に集約しようというのが一番の目的です。従来のオフィス機能は、天王洲と羽田に分かれており、さらに、天王洲のオフィスは4つのフロアに分かれていました。建築の設計はチームでする仕事ですので、それをひとつにして、部門を超えた社員同士のコミュニケーションを活発にしたいという思いがありました。 そして、せっかく450名の社員が1拠点に集まるのであれば、全員の顔が見えるワンプレートのオフィスが良いと会社の経営陣が考え、物件探しが始まりました。しかし450名がワンプレートで働くことができるオフィスビルはなかなか見つからず、そこで発想を転換し、物流倉庫なら広大な平面を確保できると考えたのです。物流倉庫をオフィスに転用するという新しい取り組みに対して、既成の概念に囚われないあらゆる可能性を探るため、社内コンペが行われました。そこで私の案が当選案として選ばれ、設計がスタートしました。

新オフィスの特長は?

新本社は約100×65m,面積5,300㎡,階高6.6mの巨大な倉庫空間で、450名全員がフリーアドレスで働くオフィスとなっています。
空間がとても大きいのでまずゾーニングの検討から始めたのですが、各ゾーンを明確に分断せず、ヒエラルキーを解体していくようなことを考えました。なぜなら、集中する作業、チームでのブレスト、同僚との談笑、それら全てが優劣の付けられないオフィスでの生活の一部であり、それらを等価に扱うことが「働く」ことの質の向上につながると考えたからです。そこで、ここではワークスペース,ラウンジ,ホール,カフェテリア、ストックヤードといった大きなまとまりがヒエラルキーのない等価な関係で並び、有機的なつながりの中で成立する構成となっています。その結果、ワークスペースからホールでのレクチャーの様子が垣間見えたり、仕事に疲れたらカフェテリアでふらっと息抜きできたりする、日常の延長のような「ラフさ」を持った空間が生まれました。
もうひとつ、ゾーニングを横断するように「ランウェイ」と呼んでいる抜けを4本通しました。ランウェイとは「空港の梓」という社のアイデンティティを体現する場、であると同時に特定の機能をもたないパブリックスペースです。打合せや、食後の休憩の場、時には全社イベントの際は料理が並ぶパーティー会場にさえもなります。こういった公共性を帯びた空間を作ることができるスケール感こそが倉庫空間をオフィスに転用する醍醐味だと考えています。

東リ商品を
ご採用いただきました
理由を教えてください

大勢の人がひとつの場所で働くことから、足音が気にならないように床にカーペットを採用することは自然な流れでした。そして、普段から仕事をする上でカーペットを選定する機会も多いことから、オフィスの床をカーペットのショールームにしたらどうだろうというアイデアが浮かびました。これならオフィスを歩き回りながら、色や柄の印象や、歩いてみた時の感触などを確かめながらカーペットを選定することができます。そこで、カーペットのリーディングカンパニーであり、多くの品番を揃える東リ商品はショールーム化には必須でした。足元にすぐ商品があることで、思考を中断させることなく設計業務に集中できます。さらに、現在はカーペットをスマートフォンで撮影するだけで、品番がわかる「Pic Archi」というアプリを、社内で新しく立ち上げた、「AXチーム」というデジタルに特化した部署が中心になって開発しました。これにより、気に入った商品をその場ですぐに仕様まで確認することができます。設計をお客様にご提案する際、ホテルやデパートなどラグジュアリー感を出したい、また手頃な商品を使いたいなど様々なニーズに合わせる必要があるので、デザインや素材が豊富な東リ商品は必ず選択肢となりますね。

実際に使用してみた
ご感想をお聞かせください。

普通ならカーペットはワンフロアでだいたい同じ品番ものを使います。ところが今回は様々な品番のカーペットを使うので、ごちゃごちゃした雰囲気になるのではないか、デザイン的にまとまりを保つことができるか心配でした。しかし、コンピュータでのシミュレーションを重ねて、実際に出来上がってみると、非常に良い仕上がりで、広いオフィスにメリハリをつけることができたと思います。ただ、たくさんの品番のカーペットを設計図通りに敷きつめるために、施工する人は少し苦労したと思います。厚みが異なる品番が隣接することも不安でした。例えば、毛足の長さが2ミリ違うカーペットが隣りあうことで、椅子のキャスターの滑りが悪くなったり、歩いた時に引っかかったりするのではないかなどの点です。しかし事前にサンプルを確認させてもらったり、東リのご担当者から意見を聞いたりして進めたところ、実際はまったく問題ありませんでした。品番の違うものを並べたときの「境目」を実際に見て感じることができたのは良かったです。こうやって自分たちが実際に商品の使いごこちを体験することで、お客様にも自信を持って提案できるんです。
またカーペット以外にもスロープ部分などに、東リの長尺シート(フロアリューム プレーンエンボス)を採用しました。エンボスのデザインが倉庫の無骨な印象にとてもよくマッチしていて、大変気に入っています。東リのカーペットは汚れに強いとは聞いていましたが、ドリンクコーナーの周辺にはビニル床タイル(ルースレイタイル LLフリー5ONW-EX)と組み合わせました。自分で設計したからか、床にコーヒーが少しこぼれていたりすると自分で拭いてしまうのですが、汚れ落ちはいいと感じています。今回の新オフィス移転については、東リのご担当者には様々な面でご協力いただきました。これから年数を経て、今のカーペットがどう変化していくのかも楽しみです。

Profile

設計
斎藤愼一さん

株式会社梓設計
アーキテクト部門
BASE 02 主任
一級建築士

掲載日 2020.04.27