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  3. 第77回 臭い管理の重要性

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.77

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

臭い管理の重要性

様々な「臭い」のサイン

第76回「湿度調整の重要性」で室内の湿度が健康維持に大切であることをお話しましたが、湿度に関係性が深いものに「臭い」があります。気候が暖かく湿ってくると臭いも気になってきますね。飼い主さん達の中には「ペットがいるのだから家や服が多少臭くてもあたりまえ」と思いがちですが、「臭い」は住まいや家族からの重要なサインであるということも理解しておいて欲しいのです。

例えば排泄臭です。トイレの周辺ではアンモニア臭が発生しやすいですが、健康な犬猫ならば、排泄直後の尿は刺激を感じるほど臭いません。排泄したばかりの尿に刺激臭があるのであれば、肝臓に腎臓、膀胱といった「体の器官にトラブルがある」というサインです。糞も生臭さはありますが、腐卵臭がきついようだと「お腹の調子が悪い」というサインです。また、健康な体から出た尿でも、尿が空気にさらされた状態で置いておくと、空気中の細菌によって尿素が分解されてアンモニアに変化したことにより臭います。これは、「適切な場所で排泄されていない」「便器が適切なサイズや形状でない」状態を示しています。つまり、「トイレが使い辛いよ」という使い勝手の課題がトイレ空間にあるというサインなのです。

同じく、寝室やベッドの臭いも気をつけたい場所です。食べ物やトイレがなくとも、動物の体から代謝によって出された汗や老廃物が落とされていきます。寝具をこまめに洗って掃除もして清潔にしているつもりでも、ホコリや抜け毛があればそこに老廃物がダニや細菌などの栄養源となり繁殖することで臭いを発生させます。「掃除ができていない場所があって、室内の汚染源となっています」というサインであるわけです。また、体調不良でも汗は臭いやすくなりますから、寝具やソファーカバーの臭いが気になるようであれば、それは家族からの「体調が悪いです」というサインであるとも言えるのです。

こうした、臭いがしてあたりまえのように思っている「トイレ」や「寝床」こそ、体調不良と室内環境の健全性のために、よごれや臭いの定着を防ぎ、臭いに気がつきやすい状態にしておきたいものです。

犬にはどうしても体臭があるものですが、室内の通気がしっかりできていれば、臭う空気は室外に排出されていきますので、清掃しやすければそれほど心配する必要はありません。ただし、臭いは温かい空気にのって天井付近へと登っていきますから、天井付近の壁に臭いが定着する可能性があるので、ここは気をつけたいところです。

壁と天井を消臭機能のある建材に

そういった臭いの課題に対し、床材や壁材では耐水性があって拭き掃除がしやすいとか、消臭性能があるなどのたよりになる機能性建材が開発されています。消臭性の高い仕上材は調湿性といった体に優しい機能もある種類が多いですが、引っ掻きなどで傷つきやすい素材が多いので使用場所を工夫しましょう。先にもお話したように多くの臭いは天井近くに上がります。天井での使用は面積が広いので大変効果的です。壁に使用する場合は、人も犬猫も普段の生活でこすりやすい、腰壁(人の腰高までの低い位置の壁)は、表面強化された丈夫な素材で仕上げ、腰高以上の部位で使用するのが望ましいでしょう。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

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