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  5. 第97回 犬と猫の歯磨きは健康の秘訣!|犬家猫館(イヌヤネコタチ)

柴内先生の にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.97

犬や猫のお手入れ

犬と猫の歯磨きは健康の秘訣!

人と動物の絆:Human Animal Bond
人と動物が共にあることで双方が幸せになれる事

家族の一員でもある犬と猫の日頃の暮らしの中でのケアで一般的ではあるけれど十分に出来ていない事の中に「歯磨き」があるかもしれません。長年伴侶動物と暮らしている皆様の中にも犬や猫が、歯磨きを必要としているということは知らなかった!という方もいらっしゃいます。最近では人間も口腔内の衛生が全身の健康維持に大切であることが知られています。寿命も延びて、口腔内をきれいに保つ事は健康長寿につながる道であることは知られています。
人では歯周病は心臓疾患や脳血管疾患を引き起こすとも言われています。
犬も猫も自分では歯磨きが出来ませんし、人のようにいわゆる「ぶくぶくうがい」ができません。何もケアをしないで放置してしまうと多くの場合は歯垢から歯石になり、歯石には菌が住み着き毒素を出すようになります。歯茎が腫れて歯肉炎から歯周病になり、歯を維持できなくなり歯が脱落したり、時には歯根の炎症や化膿から目の下あたりに排膿して孔が開いてしまったり、犬歯(牙)の根っこからの炎症が鼻道に至り口の中と鼻の中がつながってしまい、「口腔鼻腔瘻」(こうくう びくう ろう)という病態になります。進行すると鼻から食べ物のカスやそれが堆積された汚物がでてくるようになり、くしゃみ鼻水、呼吸に支障もきたします。さらに進行すれば上部気道炎や肺炎などの原因にもなり得ます。
さらには3歳以上の犬と猫の80%以上が歯周病にかかっていると言われています。なにより犬猫自身がものを噛むたびに痛みを感じたり、身体の一部に不衛生な部分を抱える事になります。犬や猫の歯垢は歯石になるのにわずか3-4日です。できれば毎日家族がケアをしてあげましょう。歯周病はきちんとケアをすれば診断、予防、治療が可能な疾患です。

重度歯石の付着した犬の口腔内

歯磨きをイヤなものにしないために

犬も猫もいきなり今日から歯磨きを始めます!と家族に急に歯ブラシを口にいれられてはビックリしますし嫌いになります。初めは家族が指をつかって(グローブなどを使用して)または口腔内清拭用のウェットシートなどで口周りから口のなかを優しく触ることから始めます。(5秒くらいずつ)そこで大好きなご褒美を使います。(食べ物の場合もあれば褒め言葉、撫でて貰う事やオモチャや遊びの場合もあるでしょう。)初めのうちは口周りをそっと触れたらご褒美というところからゆっくり徐々に始めて行くのが良いでしょう。
ブラシを使う歯磨きの時にはできれば1本の歯に5秒くらいの時間をかけて磨いていくと良いですね。できたらともかく沢山褒めます。
順番としては
  1. 前歯(切歯)と牙(犬歯)の外側
  2. 奥歯(臼歯)の外側
  3. それぞれの内側
を磨いていきます。内側を磨くのは難易度が高いですが、イヤという感覚がなければ磨けます。楽しく面白い時間にしていければ大切な歯磨きタイムは家族との良いコミュニケーションタイムにもできます。
様々な歯ブラシヘッドが小さく、奥歯まで届く角度のついたものもある

歯科の専門診療

最近では伴侶動物の領域でも歯科を専門にする獣医師の方々が増えてきました。人間では歯科は医療と別に大学や学校があり別分野として確立していますね。歯科を専門とする獣医師による診療では視診、触診から入り、歯科レントゲンで診断をして顕微鏡を用いた厳密な方法で歯科処置を行います。人とは異なり歯科レントゲンも麻酔が必要になりますが、外見だけではわからなかった歯根に隠れている問題や歯肉の中に埋まっている歯の存在などもわかり、早期発見や一歩進んだ治療ができます。
患者さんの中には歯科の処置をする前はやはり具合が悪かった(痛かった)のだと思う。処置後に以前より元気になった、食事をよく食べるようになった。とおっしゃる方も少なくありません。動物達はここが痛い、違和感があるなどを言葉では伝えてくれないので、定期的に診察を受け、私たちが異常を発見する努力をしていかなくてはいけないですね。定期健康診断はそのような意味でも大切だと思います。また、急な変化は家族がいつもと違うと感じることが動物の異変発見には大切なのですが、歯周病などの慢性的に徐々に進行するものは異変に気づきにくいですね。
毎日伴侶動物の口腔内を気にすることから始めてみましょう。

歯石をとるのも顕微鏡手術で行い、歯石の溜まりやすい部位をレジンでシーラント(歯石付着予防のために凹部を埋める作業)もできます。
撮影当院内
獣医師歯科専門医 樋口翔太先生/歯科医・獣医師ダブルライセンス

profile

柴内晶子先生(獣医師)

赤坂動物病院 院長

伴侶動物医療の現場で、「人と動物の絆」〜Human Animal Bond〜を大切にした診療を行っている。 (公社)日本動物病院協会のアニマルセラピー活動であるCAPPへの参加推進を行い、社会活動として東京青山ロータリークラブでのアニマルセラピー活動を通じた社会奉仕活動を定期的に実施。心の窓をひらく「じっとみて」ワークショップには、未来育ティーチャーとして参加している。 日本大学では、非常勤講師として獣医倫理福祉の講義を行う。 様々な獣医事関連の委員会活動に従事し、日本大学外科学研究室の学部研究生として獣医再生医療にも積極的に取り組んでいる。