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  3. 第90回 伴侶動物:Companion Animalと人と動物の絆:Human Animal Bond

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.90

犬や猫と暮らすということ

伴侶動物:Companion Animalと人と動物の絆:Human Animal Bond

日本ではもともと愛玩動物と呼ばれてきた犬や猫を筆頭とする動物達が、昨今では「伴侶動物」と呼ばれるようになってきました。記事No37ですでにテーマとして取り上げられていますので、そちらもご一読くださると良いと思います。

伴侶:人生を共に歩む相手
と辞書には書かれています。愛玩動物という言葉のニュアンスは、日本では人が玩具的に一方的に楽しむという感覚があり、今はもう実質にそぐわない違和感を伴う名称になってきました。「この子は家族の一員だから」という言葉は、ごく自然に一般の方々から口々に聞くことが多々あります。日本にこの伴侶動物:Companion Animalという言葉が入ってきたのは、1985年ハワイ獣医師会会長アレン宮原先生の講義が初めであったといって良いと思います。人と動物の絆の時代の幕開けの年かもしれません。翌年には(公社)日本動物病院協会の動物介在活動がスタートしました。当時は厚生省老人福祉課の認可の元に始まりました。私は当時学生でしたが活動に参加したのを覚えています。高齢者の健康に伴侶動物が貢献すると国が認めた時…だったのですね。

そもそも伴侶動物は世界的には犬・猫を筆頭に、馬・豚などが挙げられます。 日本では犬と猫が筆頭ですが、お互いに感染症も習性行動学もよくわかっている動物が人との伴侶動物となり得ました。犬は約3~4万年前、猫は約1万年前から人間と共に暮らす道を選んで、共に進化する「共進」の関係で歩んで来ました。その当時は、まだ日本列島が大陸に繫がっているような昔です。その時代にそれぞれの動物種である犬・猫と人が共に生きて行こう!と選びあったという…「奇跡のパートナー」であるとしか思えません。気の遠くなるような年月を共に寄り添って生きてきた生物種同士、それが人と伴侶動物です。

「人と動物の絆:Human Animal Bond」というスローガンは、1970年代に欧米で発した考え方です。今なお、私たち伴侶動物医療で働く者達にはとても大切な礎になっている考え方です。人と動物が共にあることで「双方が」幸せになるというものです。双方というところが大切で、今の動物と暮らす家族はそれを実践している方が多くなっていると思います。もう少し易しく言えば、犬や猫の事をより良く知って、学んで、共に暮らす動物の事を理解して共に生きることです。「双方」が幸せになれるということを多くの方々が実践しておられると思います。

このスローガンの発端となった物語は、レオ・K・ビュースタッド獣医師とボリス・レビンソン精神科医のお話です。レビンソン先生は自閉症の子どものカウンセリングを一定期間続けていましたが、中々言葉を引き出せませんでした。ある日、愛犬を伴って医院を訪れた医師は驚くような光景を眼にしました。その患者の少年が自身の愛犬ジングルスに「話しかけていた」のです。

ここで、先生は人が「人対人以上に犬が(動物が)介在することでより人の心は開かれやすいのではないか?」という事を直感的に感じたのではないかと思います。そこから獣医師であるビュースタッド先生と共に世界に向けて提唱したのです。当時、始めは冷遇されたようですが、数十年後の今、世界中に満ち、広がっています。

人と動物の絆を直感したお二人の医療者は素晴らしい気づきをされたと思います。

このお話から発する今に繫がる様々な話題も、これから少しずつお届けしていきますね。

ビュースタッド先生
先生は来日され、講演もされました。
その時には、お嬢さんが描いた
動物の絵のネクタイをなさっていました。

profile

柴内晶子先生(獣医師)

赤坂動物病院 院長

伴侶動物医療の現場で、「人と動物の絆」〜Human Animal Bond〜を大切にした診療を行っている。 (公社)日本動物病院協会のアニマルセラピー活動であるCAPPへの参加推進を行い、社会活動として東京青山ロータリークラブでのアニマルセラピー活動を通じた社会奉仕活動を定期的に実施。心の窓をひらく「じっとみて」ワークショップには、未来育ティーチャーとして参加している。 日本大学では、非常勤講師として獣医倫理福祉の講義を行う。 様々な獣医事関連の委員会活動に従事し、日本大学外科学研究室の学部研究生として獣医再生医療にも積極的に取り組んでいる。