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  3. 第78回 「動物の保護及び管理に関する法律」の改正について

にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.78

犬や猫と暮らすということ

「動物の保護及び管理に関する法律」の改正について

私たちは一般的に「動物愛護法」と覚えていますが、2019年6月に7年ぶりに「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(2019年6月19日法律第39号)」が成立・公布されました。

この内容は2020年6月から段階的に施行されることになっています。

一般に動物愛護法と呼ばれている法律は、1973年に「動物の保護及び管理に関する法律」として制定され、1999年に現在の「動物の愛護及び管理に関する法律」に名称が変更されました。動物の愛護に加え、適切な管理を求め、社会・他者に危害を及ぼすことも防止する法律です。伴侶動物以外にも、動物園などの展示動物、畜産動物や実験動物なども含まれます。

今回は主に伴侶動物に関連する改正事項について見直してみましょう。

「動物愛護法」改正事項

●幼い犬・猫の販売規制(公布から施行まで2年以内)
改正前
  • ・ 生後7週間(49日)以下は販売できない
改正後
  • ・ 生後8週間(56日)以上に引き上げた(日本犬は特例あり)
●飼育施設などの数値規制(公布から施行まで2年以内)
改正前
  • ・ 繁殖の現場は、つめこみ、不衛生の現状がある
改正後
  • ・ 飼育施設の大きさ、従業員の数、繁殖の回数などを環境省令で定める
●虐待の厳罰化(公布から施行まで1年以内)
改正前
  • ・ 殺傷は2年以下の懲役または200万円以下の罰金
  • ・ 過密飼育や遺棄などは罰金刑のみ
改正後
  • ・ 5年以下の懲役または500万円以下の罰金に引き上げ(懲役刑を新設)
●マイクロチップの装着を義務化(所有者情報)(公布から施行まで3年以内)
改正前
  • ・ なし
改正後
  • ・ 業者には義務付け、一般の飼い主は努力義務
  • ・ マイクロチップは少し太い針の注射
  • ・ 災害時も身元の証明になる
  • ・ 住所の伝えられない動物たちのために
  • ・ 上手にあやしながら行えば痛みも少なく注入出来ます
●虐待などが疑われる業者に都道府県知事は…(公布から施行まで1年以内)
改正前
  • ・ 改善を勧告できるが実効性に乏しい
改正後
  • ・ 3ヶ月たっても改善がみられない業者を公表できる
●インターネット販売では買い手への対面説明が義務だが…(公布から施行まで1年以内)
改正前
  • ・ 送り先で形だけの対面説明を代行する業者が横行
改正後
  • ・ 店などで直接、対面説明しなければならない
●虐待をみつけた獣医師は…(公布から施行まで1年以内)
改正前
  • ・ 自治体や警察への通報は努力義務
改正後
  • ・ 必ず通報しなければならない

人間と動物が共に幸せに生きていける社会を目指して

今回の法改正に関しては、前進ではありますが、未だ未だ不十分という意見もあります。

全国の警察が2019年に、動物愛護法違反容疑で摘発した動物虐待は105件で、統計がある2010年以降で最多と増加傾向にあり、殺処分(不適切な言葉ですが)が減ったとはいえ、人間の都合で命を奪っている事実は残ったままです。

動物愛護法は1973年から少しずつ改正されてきましたが、未だ未だ強化せざるを得ない問題点が残ります。

私たちへの問題提起と受け止め、更なる改善に向かって、「動物は命あるもの」という法の理念を改めて共有し、動物は慈しむべき存在であり、人間と動物が共により幸せに生きていける社会を目指し、努力したいものです。

法律を改正してもなお続出する問題の、一例でも少なくするためには、繁殖に携わる人々、動物たちを受け入れる側にも責任があることを改めて考えてみましょう。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)