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にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.76

犬や猫と暮らすということ

犬に本を読んであげる(Reading Education Assistance Dogs)

犬への読み聞かせプログラム

1999年にアメリカのソルトレイクシティのインターマウンテン・セラピー・アニマルズという非営利団体が、「犬に本を読んであげる(Reading Education Assistance Dogs)」というユニークな方法で、子どもたちの識字能力の改善と読書意欲の向上を目的として、初めて正式に学校や図書館などの施設において実践しました(R.E.A.D.プログラム)。このプログラムでは、トレーニングを受け、健康・安全・能力・適性のテストを済ませたセラピードッグと飼い主(ボランティア)が共に、子どもたちの読書の聞き役を務め、犬が聞いてくれる、もっと上手に読んであげたいという気持ちを高め、読書能力を改善するのに効果的で楽しい時間を創ります。私たち大人は忘れがちですが、優しい犬に自分が本を読み聞かせることが出来た達成感が子どもにとって次への原動力になります。

日本における犬への読み聞かせプログラムの広がり

以前にもご紹介しましたが、公益社団法人日本動物病院協会(Japanese Animal Hospital Association=JAHA)では、1986年に獣医学を通じて社会に貢献するボランティア活動として、人と動物とのふれあい活動(Companion Animal Partnership Program=CAPP活動)をスタートし、今日まで全国の動物病院の先生方、スタッフ、飼い主様とその家族としての動物たちの働きのお陰で予想を遥かに越える約22,000回(2019年度現在)の活動を事故やアレルギーの発生もなく立派な実績を残しています。

JAHAが犬への読み聞かせプログラムに取り組んだのは2007年、東京都渋谷区立臨川小学校の特別支援学級のお子さん方を訪問していたJAHAのボランティアと担当された熱心な特別支援学級の先生方によってでした。何回かの授業をご一緒した子どもさん方は、日頃の授業で親しくなったセラピー犬のリードを得意そうに持って、ハンドラーさんのショートリードのサポートを受けながら、隣接する渋谷区立図書館に向かい、懸命に練習をして来た本を何冊も得意そうに犬に読みきかせて下さったことを思い出します。

その後フォトジャーナリストの大塚敦子氏から図書館協議会委員を務める三鷹市立三鷹図書館で犬への読み聞かせプログラムを何とかスタートさせたいとのご相談を頂き、共に特別プログラムを検討しました。そして2016年、三鷹図書館でのプログラムを「わん!だふる読書体験」と名付け、スタートしました。

日本独自のプログラム

発祥の地、米国のプログラムと少々異なる日本でのプログラムは、日本の事情にあわせた内容です。参加する子どもたちの多くは、犬に触れたこともない環境で育っています。本を読み聞かせる相手である犬は、そのお子さんにとって初めて会う犬です。ベテランの落ち着いた優しい犬ばかりですが、初めて会う犬に、ほんの20分ばかり本を読み聞かせただけで終わってしまっては様々な問題が残ります。一番の心配は子どもたちが犬はみんなこのように優しく、しつけがされていると思い、すべての犬と同じように接することができると思ってしまうことです。このような問題を残さないために、次のような工夫をしました。

それは参加を希望された子どもたちに初期段階でミニ動物介在教育(AAE)を実施することです。犬との正しいふれあい方(事故防止)等々のミニ学習を行い、読み聞かせ終了後に「ご褒美」として、当日お相手をしたセラピー犬と10分程ふれあいや室内散歩などを行い、最後にワンちゃんのこと何でも質問コーナーを持ち、セラピー犬のシールをもらって終了する、とても大切なプログラムです。

「わん!だふる読書体験」は今では人気のプログラムとなり、市報にプログラムの予定を掲載すると即日一杯になるプログラムです。

2018年、この活動を見学された千葉県流山市のおおたかの森こども図書館もこのプログラムを始められ、「わんわん読書会」として千葉県獣医師会もご協力下さり進行中です。日本でも各地の動物愛護センターや様々な団体等でも犬への読み聞かせプログラムを始めています。今年は東京都品川区の大崎図書館分館でもスタートする予定です。 動物たちは素晴らしい人類の宝ものです。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)