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にゃるほど犬猫塾

犬や猫たちの暮らしやしつけ、健康などについてご紹介します。

no.71

犬や猫と暮らすということ

新しい時代にむけて

間もなく平成も終わり、新しい時代が始まろうとしています。

平成の時代、動物医療は大きく進み、家族共々動物たちの寿命も延伸しました。

今回はこの節目の時に始まった新しい取り組みについてお話したいと思います。

人類と伴侶動物との絆を「社会が認める科学的な立証をする」ことの重要性

伴侶動物の代表、犬と猫は、人類と共に永い歴史を歩んできたことによって、今、帰る自然を失わせ、人の社会の一員、家族の一人となっています。その動物たちに適性があれば、人の社会で役割を持つことは人との幸せな将来像としてとても大切です。

1980年代、人と動物の関係に関する研究と社会的活動の中心的リーダーシップを発揮していたデルタ協会(現ペットパートナー協会)の年次大会では大きなホテルのロビーに、参加者の同伴するセラピー犬、障がい者の介助犬や盲導犬、そして一般家族の愛犬がチェックインして、各々の部屋に向かう姿を目の前にしました。日本もこのようでありたいと願い、1986年に(現)公益社団法人日本動物病院協会の人と動物のふれあい活動 Companion Animal Partnership Program CAPP活動をスタートさせました。CAPP活動は、適性のある伴侶動物を家族(ボランティア)が伴って、各種の施設等を訪問するボランティア活動で、動物介在活動/療法/教育として広がり、今日まで32年間に21,000回を事故なく、アレルギーの発症もなく継続しています。

CAPP活動の主な訪問先は高齢者施設、ホスピス、障がい者施設、作業療法施設、精神科、小児病棟、中・小・幼・保育園、児童館、図書館などでのREADプログラムと活動の依頼は増えています。

しかし、身辺を見回すと、動物たちの社会的処遇はバスにも電車にも乗れない、レストランやホテル(リゾートの特別指定以外)にも入れません。改めてその理由を考えると、日本の生活様式(靴を脱ぐ)から育っている感覚、また、未だにマナーの悪い人もいる、嫌悪感を持ったり迷惑に思う方々もいるからでしょう。

もっと自然にその必要性を正面から認識して受け入れられる材料が必要と考え続けた結果、人類と伴侶動物が培って来た温かい絆を「社会が認める科学的な立証をする」ことが重要との結論に至りました。

調査段階だが、子ども病院や高齢者施設では良い結果が現れている

13年間訪問を続けている千葉県立こども病院の小児血液腫瘍病棟でのセラピー犬とのふれあいが、子どもたちにどれ程の喜びを育み効果的であるかの調査を2017年から医師側(千葉県こども病院 血液・腫瘍科 部長 角田 治美 先生)からの協力申出を受け東京農業大学太田光明教授の尽力を得て、血液腫瘍病棟に長期入院する子どもたちの唾液のサンプルからオキシトシンの増加が立証出来、現在も調査を継続中です。

また、2018年からは同様の調査が高齢者施設でもスタートさせ、オキシトシン分泌分析に加え、AIによる笑顔出現測定、心拍変動解析からも良い結果が得られています。

人類と伴侶動物が長年にわたり培って来た温かい絆は、これからの社会、これからの時代にこそ望まれます。

profile

柴内裕子先生(獣医師)

赤坂動物病院 名誉院長

日頃より伴侶動物医療に携る一方で、社会活動コンパニオンアニマルパートナーシッププログラム(CAPP)のリーダーとして高齢者や障害者の各種施設や病院、小学校などを動物たちと共に訪問するボランティア活動に幅広く活躍されています。(柴内先生には、東リ「犬家猫館」の製品開発の際にもさまざまなアドバイスをいただいております)