スウェーデン・建築＆デザインリポート5 | フィンランドフォーラム

	2010.10.14 スウェーデン・建築＆デザインリポート
	ソニー・ナカイ　グラフィックデザイナー

昔の漁村は今日の避暑地

道は岸壁沿いに続き、その道に沿う高い岩壁には、木造の小屋が立ち並んでいます。多くのレストランやショップが観光客で賑わうのは夏場。ちょうど、売り出されていた小屋は30平米くらいで200万円ほどの値段でした。夏は魅力的な場所ですが冬はどうなるのでしょうか。そんな魅力的な避暑地の漁村には、観光客相手のショップやレストランだけではありません。昔から引き継がれた漁業に従事する人も多く暮らしています。

スウェーデンは硬い鋼の産地として有名で、日本の包丁もスウェーデン鋼を素材にしていると聞きました。
氷河時代に形成された硬い岩壁も頑固で硬そうです。岩壁と青空と海の色に惚れ込んでしまいます。
岩壁に沿って小屋が立ち並び、岩壁をそのままインテリアの一部として壁にしている家もあります。
ヨットハーバーと漁村の風景は、岩壁、青い空と海に続き、岩壁の上は見晴らし最高の住宅地です。

新鮮な海の幸を提供するレストランを見つけ、シーフードサンドイッチの昼食。
薄いパンの上に大盛りの新鮮なエビ、ザリガニ、キャビア、サーモンで一皿1200円程。

スウェーデンビールで粋なランチを楽しみました。フィンランドと比べてスウェーデンは海の幸への理解は深く、「SUSHI」は何年も前から、スウェーデンの食文化に浸透していました。小さい町にもかならず一軒の寿司屋があり、ストックホルムでは中華レストランでも寿司を提供します。ほぼ200mおきに寿司屋の看板！
フィンランドでも寿司文化は広まっていますが、エビ、貝、蟹のメニューはまだ見かけません。エビを食べていると変な顔をする人がまだいます。イタリア首相が「フィンランド料理は世界レベルに達していない。」と公開の場で発言したのには驚きましたが、その意味も少し分るような気がします。南国に比べ、やはり料理の素材に乏しいところがありますから。

波止場のカモメは人に慣れているのか、近づいても逃げません。一方、釣り針と釣り糸が刺さったまま飛んでいる鳥を見ました。鳥が魚を狙って潜った時に海に棄てられた釣り糸に引っかかったと想像します。カモメは何も語りませんが、自然環境はつねに動物のことも思い、常に住み易い環境にしなければならないと教えられました。

立ち並ぶ店はショップとレストランだけでなく、最近どこでも見かけるようになった刺青サロンもありました。
男性に限らず女性も、労働者に限らず教育者も、
時々小さな刺青を腕か足のどこかにしているのをサウナで見かけます。
その多くは、恋人の名前や図柄。最近は「漢字」も流行でしょうか。
「武士道」「空手」「愛」など、意味と図柄に魅力があるのでしょう。

北欧特有の赤土色のペイントは、北欧でも北の地域だけで採掘される鉄分を含む粘土を原料としています。
土中に僅かながらの「毒」が含まれているため、木材防腐効果があり、虫がつかないのです。
これらの素朴な赤、黄、青、白の家々は強い印象を与えます。

ハーバーから観覧船に乗って、海から村を眺めました。スウェーデン国旗が風にはためき、村人や建物の穏やかさに、一瞬、時が止まってしまいました。次の機会には、フィンランドの旅も紹介しましょう。

夏の北欧・スウェーデン建築デザイン紀行をありがとうございました。写真からでも青空と光の反射が美しく見えます。現在の北欧デザインと、伝統的な漁村風景と家屋。バルト海を挟んで向き合うフィンランド西海岸にも、よく似た雰囲気の漁村が残っています。両国の伝統文化はつながっているのですね。
機能主義以来の白いインテリアは、フィンランドでも基本です。昔の漁師の家も白いペンキ塗りがベースですが、一方、花柄の幾何学模様の壁紙はロマンティックな印象で、甘いパステルカラーの色彩感がスウェーデンらしいですね。そういえば、コスタボダのガラス器もメイド･イン･スウェーデンです。私は20年近く前に数回、ストックホルムに行きましたが、やはり日本食レストランで寿司を食べました。また行ってみたいです。　　

（せきゆうこ・フィンランドフォーラム・コーディネーター）

前のページへ

フィンランドと日本の往復書簡を中心に、世界各国に暮らす人々のインテリア事情をレポートしています。