高校生の生活2 | フィンランドフォーラム

2006.6.1
自己責任と自由選択フィンランド教育事情　その２

ソニー・ナカイ　グラフィック・デザイナー

高校卒業後の進路

卒業までの高校生活は通常3年ですが、2年から4年までの範囲で卒業できる仕組みです。週30時間を習得した生徒は2年で卒業できる可能性があり、週15時間の生徒は4年かかることもあります。自分のペースに合わせて勉強できることで、ストレスの少ない学習環境が整うわけです。

高校卒業後、男子生徒の大半は11か月間の徴兵にのぞみ、その期間中に将来への希望を固めるケースが多いようです。

エーロ君の将来は、他の高校生と同様、まだ確かではありませんが、希望と目標はあります。宗教関係の勉強にうちこみ、イスラム教とキリスト教の相違を研究し、テロリズムへの分析を通して世界平和を願っています。職業として教授や牧師になれるかどうか、可能性は決して高くはないのですが、彼は頑張るつもりです。

受験勉強としての特別な勉強法はありません。毎日の学校生活の中で効果的に勉強をすることこそ一番。それ以上勉強しても、効果がないと感じているからです。

北欧では、高校の卒業試験は国家試験になっています。この試験結果は将来、大学への入学や就職に関係してきますので、高校３年生は大事な時期になりますが、それぞれ自分のペースで勉強している様子です。

学校以外の活動と趣味

ところで、エーロ君の学外活動は、やや風変わりです。先生は彼を「アクティビスト」と呼んでいます。なにより高校生の彼は、町行政のやり方を話し合う会の会長を務めています。会員は同じ年頃で、政治に興味を持つ人々ですが、町が集会所を提供し、話し合いの内容は町の行政へ報告しています。

また、彼は教会の国際的な行事、たとえば、外国人訪問者の接待にも興味を持って参加し、ボーイ・スカウトにも加入しています。一方、インターネット普及率の高い社会ですが、情報収集以外には使っていません。

同じく18歳の高校3年生、少し恥ずかしがりやのユハ・クオルッティ君にも、勉強と高校生活について尋ねました。生徒間で競争することなく、設備の整った教育環境と学校の優れたインテリアデザインは、学習意欲をバックアップしてくれるそうです。スポーツでは水泳が得意。クロールで50Ｍを35秒の記録です。銀行でのアルバイトもあり、かなり充実した毎日を送っています。大切な事は、勉強、運動、仕事の時間をいかにやりくりするか。入学して初めの頃は勉強で忙しく、泳ぎに行く時間も少なかったのですが、3年生の半ばからは、学校の授業は終了し、卒業までは自由学習になります。彼の目指す大学の専攻は数学で、入試のための勉強はしっかりとしています。さらに、お父さんが勤務する銀行の支社で、一日8時間の仕事もこなしています。高校生のうちから、しっかりとした考え方で、勉強と仕事に取り組んでいるのです。


数学の教授を目指すユハ君。私の事務所でのインタビュー。自宅でもPC環境は完備。


自宅のリビングでTVを見るユハ君。水泳に凝るユハ君は3KMを45分で泳ぐ。ストレス解消に最適。公共のスポーツ施設は普及している。

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フィンランドと日本の往復書簡を中心に、世界各国に暮らす人々のインテリア事情をレポートしています。