高校生の生活1 | フィンランドフォーラム

	2006.9.14 自己責任と自由選択～フィンランド教育事情　その2～
	ソニー・ナカイ　グラフィック・デザイナー

フィンランドでは、6月中旬に夏休みになり、8月下旬から新学期がスタートします。日本の学生たちの夏休みは、遊びより宿題と塾？今回は、高校生活の続編をお届けします。話を聞いたのは、ヤルベンパー高校3年生のエーロ･ラモン君。18歳のてきぱきとした男子生徒で、「カレンダーがないと生活がまとまらなくなってしまう。」と、必ず分厚い予定表を持ち歩いています。まず、彼の学習に対する動機について聞いてみました。

私のオフィスでの取材に応じるエーロ君。手元には予定表。

競争より、自己責任

フィンランドでは1995年から、高等学校の教育方針に画期的な変化がありました。それまでのクラス割りと担任教師の制度をやめて、生徒自身が自由に科目を選択できる方式になったのです。授業時間も1週間に最低15時間から最高30時間の範囲で自由選択に変わりました。

つまり、個々の自覚の成長が重要視されたのです。クラスというものが存在しないためか、生徒間の競争意識が薄れてきたことも確かです。成績の結果を公表しないことも、他者との比較のない教育環境をつくっています。これが、自己責任の意識を高めて、勉強への動機づけになるのでしょう。

大学への進学率はかなり厳しいですが、それぞれの生徒が、それぞれの能力によって、それぞれの希望する大学を目指すので、つまらない競争心は生まれてきません。たとえば世界的にも評価の高いヘルシンキデザイン美術大学（UIAH）や音楽芸術大学の入学試験は、それぞれ、美術と音楽に絞った試験科目だけ。一般教養科目の数学などはないし、入学後も数学や物理の授業はなく、芸術創作課題に集中します。他者との競争のために、自分の能力を向上させるのではなく、自分自身の勉学に集中できる環境を優先するのです。

学習への動機づけ

今日の課題をしっかりと学び、明日の課題につなげることが大切ですが、学習の波に乗り遅れれば、動機も薄れてしまいます。勉強する時にしっかりと効果的にやりとげて、２ヶ月もある長い夏休みには学校を離れ、短いフィンランドの夏を楽しく過ごして、次の学習のためにエネルギーを蓄えるのです。

休暇中には、日本の予備校の夏季集中セミナーのような有料講座もあります。それを受講すると学習単位が増えて、卒業のための単位取得にはなりますが、ある調査によると、たいして効果的ではないとかで、あまり普及していません。

それでも学習が遅れている生徒には、特別なクラスが設けられて、個人指導で学習動機を向上させる可能性もあります。いわゆる落第はありますが、落第とは呼んでいません。もう一度勉強するということで、同じ内容を他の生徒よりも深く学ぶわけだから、名誉なことだとさえ言っています！


ヤルヴェンパー高校の「アレーナ」は開放的な円形アトリウム。フィンランドデザインの家具も洗練されている。


学生ラウンジで談話する生徒たち。教室は固定的なクラスではなく、授業科目で移動する。


校内のTVルーム。障害者用のWCも完備されて、車椅子でもハンディはない。

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フィンランドと日本の往復書簡を中心に、世界各国に暮らす人々のインテリア事情をレポートしています。