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フィンランドフォーラム
2019.3.19 / ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、在フィンランド) フィンランドの建築家Severi Blomstedt ブロムステットさんのご自宅とオフィス
仕事場
家庭に仕事を持ち込まないのが彼の流儀で、オフィスは自宅の目と鼻の先にあります。仕事と家族との時間をはっきりと分けて、家庭を重視した暮らし方です。事務所の一隅に、横になれるくらいの小さなベッドが置かれていました。いろいろな思考が重なって頭が混乱する時、数分でも横になってリッラックスすること。そして仕事に戻ることです。わずか10分の休憩が良い結果をもたらしてくれることは医学界で認められています。行き慣れた素敵なカフェも、2、3歩で手が届く距離にあります。
住宅建築とコンペ作品
セヴェリさんは個人住宅の設計を好み、自然とのふれあいを大事に考える設計を心掛けています。大きな窓、広いベランダから森へとつながるように、生活の中に自然を取り込んでいます。日照時間の短い冬には午後4時には暗くなり始めます。住宅に点滅する小さなあかりが、森の動物たちまでささやかな光となって届き、屋外の寒気を吹き飛ばすような雰囲気がつたわってきました。
50年ほど前になりますが、1970年代のオイルショックの時代、フィンランドでも窓を小さくすべきとの意見が飛び交いました。それでも、窓は標準でも二重ガラス、暖房効果にこだわるクライアントには、三重ガラスの窓を使うことで、窓自体の大きさを確保しながら、自然とのつながりを大切に考え続けています。自然光を大切に。
日照時間が短くて暗い冬の間、大きな窓からの光は、優雅で贅沢な暮らしを想像させる魔法のようなものです。私が1970年2月に、初めてフィンランドの白銀の国土に足を踏み入れた時、真冬の街は暗くて厳しい寒さが身に沁みました。午後4時には暗くなりますが、窓からにじむように広がる光の中に、マリメッコの花柄(ユニッコ)カーテンの斬新な色合いとくっきりした花模様が浮かびあがるのを見て、フィンランドの独自性を強く感じ、心に暖かさが満ちてきたことを思い出します。以来、そのような暮らし方に魅了されてきました。
今日では、パソコンのディスプレイ上が設計図制作の定番になっています。そこで、昔のドローイングテーブル(製図台)はアイデアスケッチの場に変貌しました。アイデアをまとめるには、おなじみの鉛筆の黒い線を、白いスケッチペーパーの上で繰り返し動かしていきます。そして、独自の創作としての建築家のイメージは完成していくのです。
(コメント)
フィンランド首都、ヘルシンキの旧市街(波止場や中央駅周辺の中心街)は、19世紀末から20世紀前半の様式建築のそろう街区が多いのです。石造の歴史的建造物から、中層煉瓦造の集合住宅やコンドミニアム、コンクリート造になっても、ヨーロッパの街並みと同様に、外観の調和を図っています。郊外や地方都市、農村部の木造家屋の多い地区も、当時の町並み保存は当然です。何度かリポートに出てきた超高層建築群は新たに開発される地区です。
でも、一歩室内に入ると、住み手が自由に、インテリアデザイン、家具や照明、カーテンなど、各自のテイストを活かして、DIY模様替えも頻繁行い、アートや装飾も含めて、とても熱心ですね。冬は室内にいる時間が長いうえに、労働時間が短縮されてきたので、インテリアにかける情熱高いと感じます。自作のアート作品や家族の写真も飾られています。
日本の床の間の様な厳格なしきたりではないのですが、飾るものが多いか?少なくてシンプに行くか? 最近は、ミニマリズムというライフスタイルもあり、片付けと収納問題など、色々と考えます。
次回は、親日派で京都にも長く住んでいた女性建築家のリタ・サラスティエさんのご自宅訪問とインタヴューの予定です。長い間の友人であるリタさんは書道や生花にも造詣があり、ライフスタイルも個性的です。楽しみにしてください。
近代から現代にかけて、等身大のフィンランドの建築家の住宅や仕事を紹介していただきます。読者の皆様からのフィードバックなど、是非とも、お寄せください。
(せきゆうこ フィンランドフォーラムコーディネータ)