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自然と芸術の融合した暮らし

素敵な出会いから住まいへ

2019.12.25/ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、フィンランド在住)

日本の草月流華道とフィンランディアのクラッシック音楽の血統を継いだ建築家のデザイン。その家で暮らすリーサさんは、優しい旦那様と幸せそうな微笑みを浮かべて、私を迎えてくれました。

背面壁の古典的な絵画と手前の黒いピアノ。リビングルームに必要なアイテムはすべてそこにあり、小美術館にいるような気分になりました。座り心地のよいソファで、リーサが建築当時の話を語ってくれました。

リビングから庭へ通じる扉です。上の壁にリーサのモビール作品、右手の棚に書籍と絵画、日本の思い出深いファニチャ―で一杯です。少し装飾が多いかなと感じましたが、深く思い出のあるものは、なかなか捨てられません。いつも側に置いておきたいものです。

2階から見下ろすリビング空間。大きな窓からの採光条件は夏と冬でかなり異なります。暗い冬には、雪に反射される光で暗さを緩和して、雪の冬景色が広がります。

料理上手なリーサさんのお気に入りは、広さと窓から入る自然光。料理作りが楽しくなります。

リビングは2階ホールにつながる吹き抜けがあり、奥行の深さも呼応しています。1階のキッチンはリビングと繋がっていますが、2つの空間はその役割を考慮して、明確に分かれています。2階はベッドルームで、空き部屋になった子供部屋にも、昔のままの姿が残っていました。
現在、夫婦二人で暮らす優雅な住まいには、美術館にいる様な錯覚を覚えるほど、多くの絵画が飾られています。その中にはリーサ自身の作品もあり、アーティスティックな雰囲気が一杯の空間でした。そして、いかに日本文化を愛する家庭なのでしょうか。数々の日本の工芸作品が、インテリアデザインに調和していました。

(写真左)左のヴィンテージカップボードは、一昔前には、どの家にもあったものです。
(写真中)2階の廊下の床にタペストリーが敷かれていましたが、有名な作家の70年代の作品です。
(写真右)リビングから見上げると、曲線の手摺壁の向こうに2階の小部屋が見えます。

(写真左)ベッドルームもみせて頂きました。壁一杯に絵があり、彼女の宝物のキモノもかけられています。
(写真右)2階には子供たちが使っていた部屋があり、ベッドルームとご主人の書斎もあります。さりげなく置いてある糸紡ぎ車(スピンウィール)も魅力的で、思い出の骨董品と絵画で溢れていました。

美術雑誌「太陽」のフィンランド特集記事にも、ヌルミネン邸は紹介されました。

フィンランド系のアメリカ人で、日本に定住して、木版画に一生を捧げた作家がいます。彼の名前は、カーフ・クリフトン。彼の作風は曖昧さの無いはっきりした線と色です。日本人に負けない程の素晴らしい作品をたくさん残してくれました。彼の制作活動拠点は岐阜、京都を経て、晩年は金沢に居を構えました。多くの古い日本の風景と伝統文化を版画に残しました。彼が、ヌルミネン邸を訪問した時に、リーサが購入した作品もあり、何点か飾られていました。

草月流一級師範理事の証書と新人賞を受賞。家元からも認めていただき、リーサの草月名は「蘭花」と名付けられました。フィンランドと日本で評価された時のたくさんの表彰状も飾られていました。

コメント

私もヘルシンキで、リーサ・ヌルミネンさんにお会いしたことがありました。ギャラリーのオープニングの新鮮な出会いのひと時に、キモノを羽織って素敵なダンスをご披露されました。次回は建築家のセヴェリ・ブロムステットさんへのインタヴュー記事をお願いしています。続編を楽しみにお待ちください。
最後にソニーさんからの素敵なクリスマスカード。静かな冬のフィンランドから、深い祈りが聞こえてきませんか。

Merry Christmas

(せきゆうこ・フィンランドフォーラム・コーディネーター)