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自然と芸術の融合した暮らし

素敵な出会いから住まいへ

2019.12.25/ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、フィンランド在住)

フィンランドの紅葉も終わり、氷点下の気温になり始めました。既に車はスノータイヤとなり、雪とともに暮らす日々になりました。12月初めの独立記念日を過ぎると、次はクリスマスの飾りつけです。街中は昔から続けられてきた電飾(イルミネーション)と毎年工夫を凝らしたクリスマスデコレーションで輝いています。今回は、フィンランドの四季の変貌をそのまま感じられるように、大きな窓を取り入れた住宅をご紹介します。ご一緒にリーサとマッティのお宅に向かいましょう。

落葉樹の多いが紅葉が終わると、一気に大量の落ち葉になります。

落葉樹の多いが紅葉が終わると、一気に大量の落ち葉になります。

LiisaとMatti Nurminenの住まい

日本の文化を深く理解して、フィンランドでの生活に取り込み、暮らしているフィンランド人と、時々ですが、出会うことがあります。多くの方々は日本文化を学び、自分なりに研究したうえで日本に滞在して、さらに深入りするというパターンです。一方、何かの偶然から日本文化と遭遇し、そこから素晴らしい体験が続いて、知れば知るほど惚れ込むというケースが、意外にも多いことに気付きました。
フィンランド航空で客室乗務員を務めていた リーサ ヌルミネン女史は、空を移動する仕事の中で、日本の華道「草月流」の先生と出会ったことが始まりでした。今では、フィンランド国内で草月流の華道教授を営んでいます。最初の生徒さんは既に教授になり、さらに新しいお弟子さんが育ち、フィンランドにおける「華道」を広げています。さらに、ヨーロッパ諸国の草月流グループとの情報交換を行い、日本文化の繁栄に寄与しています。日本国からの叙勲に相応しい成果を遂げていると、私は感じています。リーサのご主人であるマッティさんは、フィンエアーのパイロットとして世界を駆け廻りながら、彼女の業績を支えてきました。退職後も、互いの信頼の絆は、空から地上の家庭生活へと継続しております。

ヌルミネン夫妻は、1980年代にヘルシンキ郊外にスイート ホームを建てました。フィンランドの著名な作曲家シベリウスの孫にあたるSeveri Blomstedt氏に、自宅の設計を依頼しました。設計のすべてを、全幅の信頼を寄せるSeveriさんに託して、建築家の発想を体現する素晴らしい住宅が生まれました。それでは、ヌルミネン邸にアプローチしていきましょう。
300uの敷地には、広い庭と200uの建物が配置されています。大切にしているランドスケープと自然環境を、大きな窓から取り入れてリビングと庭が一体化する構想です。庭の写真は10月中頃に撮影したので、紅葉もほぼ終わり、静かに雪を待つ季節でした。ヘルシンキでは、クリスマス前に雪が降っても、だいたい解けてしまいます。10月から11月は湿気があり、日照時間は短くなる一方ですから、観光向けにお勧めできる時季ではありません。クリスマスを過ぎると芝生も樹木も、真白に変貌します。春になれば様々な色彩の蕾たちが、しだいに薄くなる雪の下から芽吹き始めて、長い冬眠から目覚める自然を共感します。そして、涼しい緑陰に囲まれた夏の庭の快適さは、どれ程居心地がよいことかと、強く印象付けられました。様々な緑の色彩感が連続して、日照時間は長くても涼しい夏の景色を想像してください。空一面に、フィンランド国旗そのものの爽やかな青空と涼しい白い雲が広がります。秋の紅葉の美しさはポエムであり、シベリウスのフィンランディア交響詩そのものと重なり、フィンランドの四季を満喫するランドスケープです。この庭で、明るい夏の夜には、友人たち一緒にガーデンBBQパーティーが欠かせません。

10月初めに撮影した、ヌルミネン邸の庭からの眺め。リンゴの木の枝に残った小さな実が、ニュートンの法則に従って、いつ落下するか? 楽しみに窓から眺めているそうです。夏から秋にかけて、リンゴが育ちすぎると、その蜜を目当てに蜂が集まるのを嫌って、早く摘む人もいるそうです。
写真Garden 食用茸も自生します。フィンランドでは茸の価値を美味しさランク1〜5ポイントで評価していますが、これは1ポイントで食べる価値はありませんが、そのまましておけば、春には芝生の肥料になってくれます。

庭の一画には、枝と木を集めたインスタレーションが飾られていました。落ち葉の中には日本人庭師が設置した灯篭がありますが、何か物足りな気な表情で、近づく冬を待っている様子でした。

玄関側から眺めると、白い建物を背景にTOYOTAの赤い車、素晴らしいコントラストでした。