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いつでもどこでも、「誰かと一緒に美味しい食を」

レストランデイ【円形住宅】高層建築

2018.6.14 / ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、在フィンランド)

フィンランドの建築デザインと世相

第二次大戦以前の歴史的建造物は別として、フィンランドでも、戦後の近代建築の流れの中で、ほぼ10年ごとにデザインの潮流に変化がありました。2018年の今、その変化がくっきりと見えてきます。

1950年代は大戦後の復興期です。多くの家族が国庫補助を受けて、70m2前後の戸建て住宅を建てました。今から思えば小さな家ですが、どれもほぼ同じ大きさとデザインの木造建築で、窓は小さめでしたが、もちろんサウナ付きです。ヘルシンキにもその時代の住宅街が残っています。

60年代になると、自然光を取り入れるために窓が大きくなってきました。フラットな屋根が横に伸びるデザインで、タイル張りの外壁が多く見られました。そして室内プールが、この時代に大ブームになりました。

70年代には、世界が初めて体験するオイルショックがあり、暖房用の省エネルギーが推奨されて、窓は小さくなります。この時代にも「カビ問題」を生じましたが、室内プールはほぼなくなりました。

80年代になると、大雪時の屋根の崩壊を防ぐために、フラットルーフから傾斜屋根に変わりました。強度の高いコンクリート造も増えてきて、工場製作のユニット化が進み、パネル工法で積み木のよう取り付けられました。これは建設工期短縮になり、コストの合理化も図られました。

1990年代の特徴◇強調する色彩

1990年初期に建築業界最悪の不況が始まりました。必要とされる建物は数の上では達成したとされて、建築家を含む建設業と関連するデザイン業界はどん底に落ちました。日本のバブルが弾けたのと同じころで、実に大変な時期でした。94年にEUに加盟、さらに携帯電話をきっかけにしてノキアが世界市場へ進出。90年代末には、フィンランドの教育、マリメッコなどのデザイン産業のイメージアップが図られるにつれて、景気回復が進みました。以来、インフレ率は毎年3%くらいで、住宅価格も毎年漸増しています。しかし建築界全体の回復には長い時間が必要でした。そして、アクセントカラーを使ったマンションブームも始まりました。

3階建てのユニット住宅は、優しくて親しみやすいデザインで、小さい子供のいる家族にも、好評でした。アクセントとはいえ、穏やかなペールカラーは周囲となじみ、ご近所とのお付き合いも親密になる雰囲気がありました。

3階建てのユニット住宅は、優しくて親しみやすいデザインで、小さい子供のいる家族にも、好評でした。アクセントとはいえ、穏やかなペールカラーは周囲となじみ、ご近所とのお付き合いも親密になる雰囲気がありました。

2000年の特徴◇バルコニーの室内化

中層住宅では、【バルコニー】は、一部屋増えるという便利さが好評となり、さらに必須のスペースになりました。高層の集合住宅には、以前から取り付けられていましたが、2000年代になると、ガラス張りのバルコニーが当たり前になりました。春から秋までは居室として使えます。ガラス張りでも、冬の暖房費は約20%も節約できます。高齢者向けではなく、ユニバーサル思考のデザインが基本になり、一般住宅でも車椅子が自由に動けるトイレの広さを確保しています。

中層集合住宅でも、ガラス張りのバルコニーが普通になっています。

中層集合住宅でも、ガラス張りのバルコニーが普通になっています。

2010年代の特徴◇ついに超高層

さらなる高層化時代が始まり、外観デザインでは四角い箱型ファサードは減り、傾斜屋根の台形フォルムがブームになっています。建築中や建築予定の高層住宅が、今でも続いています。ヘルシンキ郊外のパシラ駅前には高層ホテルが着工し、私の住むヤルベンパーでも、高さ90mの高層集合住宅が完成しました。このビルと一体のショッピングモール建設も始まりました。フィンランド第二の都市であるタンペレにも、数年前に駅前に高層ホテルが出来上がりました。

2000年代後半にヘルシンキ初の超高層住宅がヴオサーリに建設されて、超高層時代に突入。台形の中層マンションは2年前に着工して、去年の冬に、窓から明かりが見えました。周囲はまだ工事中ですが、すでに入居が始まっているのでしょう。新しいデザイン手法として、外装にアクセントカラーを点在させて、変化を演出しています。屋根の傾斜もこの時期の特色です。右端はグラフィックパターン付きの鉄筋コンクリート造マンションです。中央の淡い灰色の壁面には、花柄パターン模様が描かれています。あるデザイナーが発案して、図案を募集しています。日本への輸出を始まっているとかで、様々のパターンがあり、ファサードデザインの選択肢が増えました。

2000年代後半にヘルシンキ初の超高層住宅がヴオサーリに建設されて、超高層時代に突入。
台形の中層マンションは2年前に着工して、去年の冬に、窓から明かりが見えました。周囲はまだ工事中ですが、すでに入居が始まっているのでしょう。新しいデザイン手法として、外装にアクセントカラーを点在させて、変化を演出しています。屋根の傾斜もこの時期の特色です。
右端はグラフィックパターン付きの鉄筋コンクリート造マンションです。中央の淡い灰色の壁面には、花柄パターン模様が描かれています。あるデザイナーが発案して、図案を募集しています。日本への輸出を始まっているとかで、様々のパターンがあり、ファサードデザインの選択肢が増えました。