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  3. 第91回 美観から犬や猫と暮らす床を考える

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.91

犬や猫と快適に暮らすためのインテリア

美観から犬や猫と暮らす床を考える

機能性だけではなく、犬や猫が可愛く見える内装に

犬や猫との住まいでは、内装仕上材は安全性と快適性といった機能的な面を基本に考えますね。この内、耐傷・耐摩耗性といった「傷の付きにくさ」や、防汚とか撥水といった「汚れの取れやすさ」、抗菌・防臭性など衛生面の機能が真っ先に思い当たるでしょう。そして、忘れられがちで重要なものに、「美観」がありますが、これは広義での快適性と言えると思います。犬や猫との暮らしでは、暮らしの豊かさのために、「うちのコが可愛く見える(撮れる)か」といった違う観点からも考えてはいかがでしょうか。

「うちのコが引き立つ」犬が目立つ床の色柄がお勧め

「美観」とは、その建材が空間に配置されて、「美しい」とか素敵に思えるかどうか、という見た目の話です。落ち着いた色目や柄にすれば、落ち着いたシックな空間になったり、明るく可愛い模様を取り入れるとポップな印象になったりと、同じ空間であっても、床や壁の材質や色柄をアレンジすることで印象を全く違うものできます。つまり、「どう生きるか、自分はどんな人間でありたいか」というライフスタイルの主張をする、大変重要な住まいのポイントとも言えるのではないでしょうか。

内装の色柄を選ぶ時、床ではそのお宅の衛生管理や掃除の方針で、一緒に暮らす犬や猫の毛の色が「目立たないように」する、または、反対にすぐに汚れに気がついて掃除ができるように「目立つように」するという、2つの選択肢があります。

「目立たないように」した場合、床の色柄を毛柄に似せると汚れは目立たないかもしれませんが、ウチのコも目立たない、という状況になります。ちょっと寂しいですね。写真を撮る時、犬の場合は、床が映り込むことが多いものです。ですから、「ウチのコが引き立つかどうか」という観点でも選ぶと楽しくなるのではないでしょうか。それに、抜け毛に気がつきやすい方が掃除もしやすいので、「目立つようにする」方が私としてはお勧めです。

猫は壁の色やテクスチャーで引き立てる

また、猫の場合は撮影が壁を背景にすることが多いので、壁の色やテクスチャーにこだわってみるのも楽しいですよ。特に工夫を必要とするのは、黒猫やサビ猫という、黒みがかった柄のコの場合です。毛柄が濃いと、「影みたいにしか映らない」という声が多く聞かれます。譲渡を目的とした保護施設では、写真写りが譲渡率に影響するため、私は譲渡型保護猫カフェなどを設計する時には、サビ猫・黒猫が引き立つよう考えています。具体的には、壁やソファーのファブリックでは黒い柄物はさけ、シンプルで明るい色合いを使うようにしているのです。

白の部分が多いコの場合は、碧や抹茶色などの渋くて濃い色合いがいいでしょう。印象の強い色や柄の壁紙でも、壁の面の1面などで、一部をアクセントとして使うと、取り入れやすくなります。

安心安全と共に、豊かで楽しいと言うことも快適性ですから、犬や猫と暮らす住まいでは大切にして欲しいと思います。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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