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  3. 第82回 音がストレスにならないために 床編

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.82

犬や猫のストレス回避

音がストレスにならないために 床編

犬や猫は、人よりも聴覚が優れており、生活環境にある音に敏感です。人には聞こえない音にも反応することがあり、犬の場合は吠え声が住宅密集地では問題となります。吠えさせないというシツケだけではなく、騒音を室内から出さない、入れない、ということが大切ですね。音によるストレスをなくすために、第33回では窓について第34回では壁について、また第43回ではハウスなどの場所について注意すべき事をお話ししました。今回は、床についても考えてみましょう。

床による吸音効果

床でおこなう音の対策は、集合住宅などの階下へのお家への配慮で、飛び跳ねたりした衝撃音の吸収をするという方法がよく知られていますね。しかし、床による吸音効果は直接的な衝撃音だけではないのです。天井には吸音天井材というものがありますが、これと似たような効果を持っています。

インテリアを使った騒音実験

東日本大震災の時なのですが、犬や猫への音環境の改善のために、実際の応急仮設住宅に壁材や床材、カーテンなどを持ち込んで騒音実験をしてみました。カーテンは遮音カーテンで、床材はオンザフローリングのタイルカーペットです。騒音源として大型犬代表としてジャーマン・シェパード、小型犬代表でミニチュア・ダックスフンド、そして人の靴音(パンプス)を用意し、スピーカで室内と室外で再生して、精密騒音計を使って住宅内外への影響を測定したのです。

オンザフローリングのタイルカーペット(カットパイルタイプ)を敷き詰めた時と敷き詰めてない時で比較すると、室外からの音に対して1250hz以上の中高周波領域で、騒音が軽減していました。つまり、騒音はカーペットに吸音されていたということです。窓から入ってきた音も、窓から出ていく音も、カーペットを敷いているときには軽減が確認できました。人の聞き取りやすい周波数は2000hz~4000hzとされていますが、犬や猫はそれ以上の周波数に敏感です。高音域で騒音が軽減されるので、カーペットによる吸音は犬と猫の耳にとって優しい工夫と言えます。

ラグなどで音の軽減を

フローリングのような堅い床材であれば、リビングなどの窓の大きい部屋の中央にラグなどを敷いてみてあげると、安心して飛び跳ねられるだけでなく、外から入ってくる耳障りな音も、うっかり吠えてしまった声も、外へは軽減されて出て行くことになり、家族にもご近所にも嬉しい工夫となります。

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

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  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

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