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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.108

犬や猫の安全

階段にまつわる注意 犬

家の中の大きな空間装置の一つである「階段」。人用の階段は、猫には楽しい運動装置ですが、小・中型犬の多くでは昇降で体の負担があるなど課題の多い場所となります。前回の猫に続いて、人向けの階段が犬にとってはどうなのか考えてみましょう。

犬と階段の問題については、これまでにも小出しに取り上げて来ていました。そこで、改めて犬にとっての階段にある課題と、その対応方法の整理をしておきましょう。ご自宅の階段が犬にどう見えているか、確認する方法がないのかも気になりますね。

犬にとっての階段の注意ポイントとその対処の仕方の整理

第21回「犬と階段の関係」 第51回「階段にまつわる注意」 で、階段は使わせない方が望ましいので、しつけを組み合わせて使用制限する方法に触れました。そして、犬にも階段を使わせる場合として、 第63回「犬にも使いやすい階段とは」 では、段のサイズを犬の体に合わせるといった工夫を提案しています。以下がそのポイントの整理になります。

階段の犬にとってのポイント

  1. 階段は出入り口と同じく「空間の仕切」の機能があり、人が階段を利用している気配は、犬の関心を呼びやすい。そのため、階段下などに犬の居場所(寝床)を配置すると、無駄吠えとされがちな「要求吠え」を誘発しやすい。
  2. ダックスフンドなどの胴長の犬種の場合、屈伸運動を繰り返すジャンプで階段を上がる状況だと、腰に負担がかかりやすい。
  3. 犬は重心が上半身の方に偏っている。そのため、降りる時に頭を下にすることでバランスが悪くなり、段を踏み損ねやすい。
  4. 犬は顔の間近に焦点を合わせる事が苦手で、鼻先に近いものは焦点が合わせづらい。降りる時の段差は鼻先に近く、階段の段がはっきりせず、急な坂となって見ええやすい。

ストレスと事故を防ぐための対応

  1. 犬の居場所は、階段下や出入り口などの落ち着かない場所には配置しない。
  2. 階段を犬にも使わせる場合、踏面を深くするか一歩一歩着地できるようになど、できるだけなだらかな階段とする。
  3. 一直線の階段を避け、数段で踊り場を設ける。
    踊り場は、体全体が乗れるだけの奥行きがあり、踏み面が鋭角になる扇型のような形を避ける。また、鋭角部を犬に歩かせないようにする。
    ※らせん階段などでは、踏面の奥行きがある階段の中央部分にカーペット材を敷くと、犬に鋭角部を歩かせないように誘導しやすくなる。
  4. 階段の踏み面には、爪を立ててもある程度くいこめるやわらかい面材や、板材やシート材であれば、表面に凹凸があって滑り止め機能もあるものにする。
  5. 階段の段鼻と呼ばれる先端部分のラインを踏み面の色の明度を変え、犬にも明確に示せるようにして、下りる時の踏む場所を誘導する。

階段が犬にどのように見えているか画像変換アプリで確認してみる

自宅の階段が犬にどのように見えているのか、確認できたらいいですね。実は、神経科学者でコンピューター科学者でもあるAndrás Péter氏が、犬の見え方が人と違うことを疑似体験するサイトの 「Dog Vision」 を公開されています。そこに画像をアップロードすると、犬にはどのように見えるか試せるのです。見下ろした時に犬には段差が見づらかった階段について、段鼻に明度が違う滑り止めをラインの様に使った場合の見え方の違いを、このアプリで作成してみました。だいぶ見え方が違うことが判ります。(注:本画像は2022年の旧サイトにて作成)

現在は、スマートフォンのアプリでも、カメラを通して動物の見え方に変換するアプリが増えているようですので、ご自宅の階段が犬にはどのように見えているか。撮影してみるのもいいでしょう。ポイントは、犬の顔の高さから階段を撮影することです。

階段を見下ろしたときの人と犬の見え方の違い
段鼻を滑り止めで分かりやすくした場合の
犬の見え方の違い

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

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