1. 犬家猫館.com
  2. わんだふるな住まいの知識
  3. 第107回 階段にまつわる注意 猫

わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.107

犬や猫の安全

階段にまつわる注意 猫

家庭でくらす猫にとって、家の中の大きな空間装置の一つに階段があります。階段とはヒトの通路である廊下の一つですが、この上下に伸びる空間は、猫にとってはヒトの移動する様子を、高さを変えながら観察できる楽しい空間でもあります。今回は、人用の階段の危険ポイントを振り返りながら、安全対策と共に猫に楽しんでもらう工夫について考えてみましょう。

階段・吹抜空間という危険ポイント

吹抜けは空間に広がりを見せ、解放感をもたらす効果があります。階段の吹抜空間の背の高い壁はデザインの見せ場でもあり、猫の昇降ステップが付けられた事例をよく見かけますね。吹抜上部には高窓が設置されることもあり、開放感や高窓からの眺めを猫にも楽しませたいという想いからでしょう。ただし、猫には上下に長く面白い空間である反面、高所から転落しての骨折という重篤な事故にもつながる危険なポイントでもありますので、注意が必要です。足場の不確かな高所への誘導になるので、途中には広めの踊り場を設け、降りる時にはゆっくり楽に降りられるような安全対策が大切になります。

また、階段や手摺りの構成によっては、上階の手摺りから下をのぞき込み、ヒトにつられて飛びおりる行動を誘発するので、転落防止を要される場所でもあります。安全対策として、手摺りの上には乗れないように、または手摺りに猫が上がっても、吹抜空間に身を乗り出さないようにネットやパネルを張るなど、猫に近寄らせない方法が一般的です。しかし、私としては、吹抜空間に安全対策をしながらも、階段をより猫にとっての豊かな場所にしてしまう工夫をご提案しています。

安全対策をしながら、ヒトを楽しむ場所に変えてしまう工夫

まず、階段の手摺りですが、私としては、階段の手摺りを猫とヒトのコミュニケーションを深めるために、積極的に活用することをお薦めしています。手摺りの上を猫にも歩けるようにして、それをキャットウオークにつなげてあげるのです。手摺りの高さは、ヒトの腰から顔までの高さの位置にあります。さらに、ヒトは手摺りにそって歩くため、猫から見れば、階段手摺りというのはヒトに近づける装置になるからです。

そして、吹抜の場合は、吹抜のトップとなる手摺りを利用して、格子状の天井を作って猫のための床としつらえます。猫が格子の上で寛げるようにしてあげるのですが、これを私は「猫見天井」と呼んでいます。安全対策であるのと同時に、猫にとっての「立ち留まり=居場所」空間の増設にもなり、普段は見られないアングルでヒトを楽しむ事にもつながります。

写真の事例は、最上階の階段の手摺りが回り込む形で小さな吹抜空間になっていたので、手摺りを利用して転落防止の格子を付けた事例です。この階段は、手摺り形状は猫が歩くのに魅力的な幅と形でした。また、手摺り同士が近い状況で、手摺り上での猫達の遊び行動により、吹抜部分への転落の危険もありました。そこで、吹抜部分に格子をかけて、転落防止を兼ねた猫の広場の「猫見天井」としました。吹抜空間は室内でも空気の流れを感じることができる場所です。この「猫見天井」にあがれば、猫は室内にいても風の流れを楽しめますし、階段を上ってくる家族をのんびり観察するという楽しみを提供してあげられます。

階段の手摺りをキャットウオークにも利用する
階段吹抜の転落防止を兼ねた、
猫がくつろげる格子床の「猫見天井」

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

  • 「猫と暮らす住まいのつくり方」

    ライフスタイルやプランに応じた住まいの実例が豊富!猫にとっての快適ポイントや危険対策がわかる!業者選び、内装材、予算などのお役立ち情報も!

  • 「犬・猫の気持ちで住まいの工夫」増補改訂版

    単なるペットのトラブル対策に終わらないしつけやトレーニングも踏まえながらのアドバイスが満載。かわいいイラストも◎。改訂版では、室内環境の意識が高まっている猫の情報と、東日本大震災で課題がみえたペット防災対策が増えました。

    彰国社刊 定価(本体 1,800円+税)

  • 「ねこと暮らす家づくり」

    猫の「あったらいいニャ~」に応えるための、賃貸やマンションでもチャレンジできる工夫を案内しています。

    ワニブックス刊 定価(本体 1,300円+税)