Story 13 タイルカーペット
「ソコイタリシリーズ」後半

「日本らしいデザインのタイルカーペットを」
ソコイタリシリーズの開発ストーリーを
前半と後半に分けてご紹介します。

さらなる進化を求めて、
革新的な3柄を発売

ソコイタリのコンセプトをそのままに、新たな柄表現にチャレンジしたのが、第2弾「ソコイタリ クラシック」です。
ソコイタリは色の濃淡で柄を表現しましたが、ソコイタリ クラシックはパイルの凹凸による陰影で柄を表現する、当時としては画期的な手法を用いました。この手法は、パイルがつぶれると目地が目立ちやすくなるため(へたり)、流し貼りが難しいデザインです。この “へたり”を目立ちにくくするために試作と検証を繰り返し、製品化を実現しました。
ソコイタリ クラシックは、2006年に「地模様」と「さざ波模様」の2柄で発売。凹凸によって柄を出すデザインは、日本らしいデザインとして好評を博しました。

2007年に発売した第3弾「ソコイタリ インスピレーション」では、後染めによる独自の意匠表現に挑戦しました。発色や光沢感の異なる複数の糸を巧みに使い分けることで、複雑な色柄を表現しました。
一般的に艶感のある光沢糸は強度が弱く、カーペットでの使用は難しいとされていました。東リが長い歴史で培った後染めのノウハウと糸加工の工夫により、光沢感とタフネスを両立することが可能になりました。
「地模様」と組み合わせる「追風模様」は、従来にない大胆な柄へのチャレンジとなりました。「追風模様」は、タペストリーを正方形に裁断したような斬新な柄ですが、シンプルな「地模様」と貼り合わせることにより、個性的な空間に仕上げることができます。

ソコイタリシリーズは海外でも高い評価を受けました。ドイツで開催されたアンビエンテ2008にソコイタリシリーズが展示され、注目を集めました。また、同年のミラノ・サローネ2008にも展示されました。

2014年に発売した第4弾「ソコイタリ グランドエアー」は、従来にないパイルのボリューム表現に挑戦しました。
タフテッドカーペットは、糸を打ち込む方向が柄に出てしまう傾向にありますが、タフト技術の向上により方向性を感じさせない表現を実現しました。ボリューム感のあるパイル表現は、ループパイルのタイルカーペットでは、これまでにない柔らかな歩行感となりました。
「地模様」と組み合わせができる「湧気文(ゆうきもん)」は、柄のスケールが大きいデザイン。そのため、タイルの目地部分にパイルの段差が生じやすく、目地が目立ってしまいます。何度も柄のスケールを調整し、目地が目立ちにくく美しく貼り上がる柄に仕上げました。

9年ぶりの最新作
2023年新発売
「ソコイタリ サウンドスケープ」

「ソコイタリ グランドエアー」の発売から5年が経過した2019年、ソコイタリの新作を開発するプロジェクトが始動、新たなチャレンジが始まりました。
そして2023年に発売した「ソコイタリ サウンドスケープ」は、「地模様」と「勢波文(せいはもん)」の2柄。「地模様」は心地よい揺らぎの瀬の音、「勢波文」は力強くうねる波の音がコンセプトです。

開発当初のスケッチ

ソコイタリにふさわしい柄とは何か、様々なアイデアを出し合いました。手書きによるスケッチを重ね、ソコイタリシリーズ共通のキーワードである“フリーハンド”の表現に磨きをかけました。
「勢波文」は、波のスケールや角度、しぶきの大きさや位置・飛び具合など、柄のディテールにこだわりました。波の表現では、線の細さの限界に挑戦しました。また、波の曲線を滑らかにし、しぶきの表現をはっきりさせるために、試行錯誤を繰り返し、完成度を高める努力を重ねました。

ソコイタリ サウンドスケープの特徴は、パイルの高低差と色のグラデーションによる、カービングのような表現。高低差によって生じる影にもこだわり、立体表現を追求しました。
パイルの高低差を大きくすると、パイルが抜けやすくなり安定的に生産することが難しくなります。規格の調整を何度も繰り返し、製品化が実現しました。ソコイタリ サウンドスケープの全厚は、東リの塩ビバッキングのタイルカーペットの中で最も厚い10.5㎜に達します。
原糸は、2021年に導入のカーペット用ナイロン紡糸設備を活用した、自社内製原着糸を使用しました。すべての品番でなめらかに色を並べ、美しいグラデーションを表現するために、ソコイタリ サウンドスケープ専用の原糸を開発しました。複数の色糸を撚り合わせて1本にし、それらを数種類使うのですが、糸の色を1本変えるだけで全体の見え方が大きく変わることもあります。自然なグラデーションになるよう試作した色の組み合わせは、優に300パターンを超えました。

ソコイタリ サウンドスケープの開発を通じて、新たなデザイン表現をするための技術を得ることができました。この技術を、今後のタイルカーペットの開発に生かすとともに、これからも新しい表現にチャレンジし続けてまいります。

掲載日 2024.04.18