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ヴオサーリプロジェクトとタンペレ住宅フェア

2012.11.15 / ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー)

ソニーの日本の文化万歳 【刺青の巻】

フィンランドに住んでいると、刺青ファンに頻繁にお目にかかります。プールに行けばよく分かるのですが、職業に関わらず様々な社会人に刺青があります。江戸時代の日本では入墨刑の制度があり、刺青は囚人の目印でしたし、現在も反社会性のシンボルととらえられることが多いようです。日本社会では忌み嫌われる刺青なのに、西洋では肌をカンバスにした芸術の如く、色を肌に刺しています。日本のように歴史的、社会的【悪】のイメージがないので、気軽に刺青をするのです。刺青をする女性も多いです。顔面にまで刺青をしている若い男もいましたが、いくら何でも顔の刺青は、就職の時に影響はあると思いますね。とにかく刺青は、普通に人々のファッションになっています。
以前、アメリカ兵が戦場で愛する人の名前を刺青にしていました。勇気を鼓舞するためか、彼女の名前とハート図案をセットで腕に入れているのを見かけました。フィンランドでは誰かの名前を刺青にする習慣はあまり見かけず、東洋イメージの図案が大半です。大きなものでは竜、小さなものでは好きな言葉を漢字で描いています。愛、信念、平和、和解、などを見かけます。面白い刺青では、住んでいる都市の市章にもでくわしました。このように刺青は、東洋的芸術であるかのごとく、西洋人の中には東洋文化への深い憧れがあると思います。

プールで会った父親と可愛い娘さんの写真を更衣室で撮らせてもらいました。普通の市民であるお父さんの足に仏陀の刺青!東洋の宗教に興味がある証拠か、何の抵抗もなく刺青をしています。 日本文化万歳といいたい!

プールで会った父親と可愛い娘さんの写真を更衣室で撮らせてもらいました。普通の市民であるお父さんの足に仏陀の刺青!東洋の宗教に興味がある証拠か、何の抵抗もなく刺青をしています。 日本文化万歳といいたい!

さて、刺青でさえ多くの人の心を動かすのだから、近い将来には日本の伝統工芸が、もっと深く人の心に浸透する時が来るでしょう。近年のアニメブームの次は、日本伝統工芸であると考えています。自然素材を巧みにいかした文化は、人の心にダイレクトに響くものがあります。いつか大きくて深い日本文化の波が、世界に浸透する日が訪れると信じています。たとえば日本の工芸道具、鉋やノミの計り知れない不思議な魅力など、世界の工芸家の心を揺るがすでしょう。
私は日本の伝統工芸の意味を深く理解し、今日のデザインに融合するための課題を新しい角度で提示するエキジビションを、世界で開催したと思っています。どなたかそんなプロジェクトに興味のある人は、ぜひともご連絡ください。

ヴオサーリのアンフィシアター集合住宅は、まさにウォーターフロント開発のランドマークになりました。モンドリアンのコンポジション画のような渋い原色の配色が、透明な乾いた空気と高い青空、深い緑の森をカンバスにしています。日本の高温多湿気候では、こんな透明度の高い空気感は出ないかもしれません。まあ、北欧に近い気候の北海道と、ひょっとすると亜熱帯の沖縄まで行けば、この色彩が映えるかな? と感じました。ヘルシンキの中心街から、わずか20分で森の緑と海や湖水の青が満喫できる広々とした居住環境は、うらやましい限りです。
住宅フェアでも色彩の幅が広がってきましたが、デザインハウスは白とダークカラーの対照的なクールモダンなインテリアですね。
ところで、西欧にはもともと『ビデ』があるのに、フィンランドには、日本的な多機能洗浄便座がないのですね。去年日本でヒットした映画「テルマエロマエ」でも、銭湯とウォシュレットがカルチャーショックでした。
回転すしの世界的普及ブームで日本食文化も拡大していますが、ソニーさんは他にもほしいものがあるということです。次回はそんな「日本からほしいもの」も紹介していただきましょう。

(せきゆうこ・フィンランドフォーラム・コーディネーター)