2006.6.1
自己責任と自由選択 フィンランド教育事情 その2 |
ソニー・ナカイ グラフィック・デザイナー |
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失業(若者の無職)保障
社会保障制度の進んだフィンランドでは、様々な非常事態の場合に、家賃、医療費、薬代などが補助されるわけですが、卒業しても長期間にわたり無職の若者には、月に370から420ユーロ (5-6万円)程の補助金が支給されます。一般的な失業保険は失業時点の給与の50%ほどがですが、億単位の高額所得者だった会社の社長やスポーツ選手も、申請すればその50%を国から支給されます。もちろん、その分の税金は差し引かれますが、これも、税金の高い社会の仕組みですね。 |
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政治家の汚職問題
世界一、政治家の汚職の少ない国々は北欧ということを耳にします。にもかかわらず、フィンランドのTVニュースで時々話題になる汚職門題で、こんな例がありました。秋を代表する北欧の夕べは「ザリガニパーティー」。そこにビジネス関係のゲストをよく招待します。汚職問題に敏感ですから、招待された方も自分でドリンク代金を支払うという、やや滑稽なニュースを聞きました。
また企業がオペラやシアターなどにビジネス客を招いて、食事やホテルで接待もします。ごく普通のことですが、この程度でも、時々厳しい批判が生じて、TVニュースの話題になるくらいです。ためしにフィンランドで、だれかに賄賂を渡してみてください。気を悪くされる可能性が高いでしょう。フィンランド人の気性で、パブなどで知らない隣人と話が乗って、ビールを勧めたりすると、「何で貴方は、私にビールをおごるのですか?」と逆に問われる事があります。
そういえば、文部大臣の3万円ほどの接待費に疑問が掛けられ、TVニュースで明細を説明していました。税金の高い北欧ですが、賄賂には厳格な倫理観のある国柄で、国民は税金の使い方に、かなり納得しているようです。 |
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フィンランド社会保障の歴史 |
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1921年 |
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義務教育制度の確立 |
1937年 |
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低所得者への出産手当制度設立 |
1943年 |
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国が全額負担する学校給食開始 |
1944年 |
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出産後の赤ちゃんと母親への健康診断制度 |
1945年 |
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民間住宅購入への低利子ローン制度 |
1948年 |
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16歳までの子供への補助金(児童手当) |
1949年 |
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年収額に関わらず、出産手当支給 |
1950年 |
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地方在住大家族向け派遣ヘルパー資金援助 |
1956年 |
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65歳以上対象の国民年金保険制度 |
1959年 |
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失業保険 |
1961年 |
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子供の多い家族に対する住宅補助制度 |
1962年 |
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退職後、月額給与の約50%の年金支給 |
1964年 |
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出産後54日間の出産保険金と休業保障 |
1965年 |
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週40時間労働制確立 |
1972年 |
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医療費無料制度 |
1984年 |
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失業後、月額給与の約50%の失業保険 |
1985年 |
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3才以下の子供に対する保育の保証 |
1990年 |
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3才以下の子供の保育園入園補助 |
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昨年、私は典型的な進学高校を見学しました。選択科目でしたが、体の大きな高校生が、狭い教室にぎっしり。壁に大学の偏差値リスト、配布資料には進学先大学のランク付と合格者数の折れ線グラフ。他者との「競争」が日常化していました。極端な例かもしれませんが、中高生の進学先は、本人の希望と偏差値をハカリに掛けているみたいな感じです。
その高校は、目下、改築工事中ですが、フィンランドの学校のように、ゆったりとはならないし、インテリアもあまり期待できないでしょう。ただ、少人数で、広くて快適な設備があれば、よいわけではありませんが、教育制度や教育環境の与える影響は、大きいのです。フィンランドの教育が国際的に高く評価されているのが、理解できますね。
前回のリポートが縁になって、愛知県のNPO法人ASK-NETの機関紙に、ソニーさんの写真とフィンランドの教育事情が紹介されました。皆様のご意見もどうぞ。 |
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(せきゆうこ・フィンランドフォーラム・コーディネーター) |
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