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アールトのヴィラ・コッコネンにて

アルバー・アールト設計のコッコネン自邸

2015.02.05 / ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、在フィンランド)

去年の12月の朝、起きると窓の景色は、真っ白の別世界。翌日からプラスの気温で融けてしまいました。こちらのクリスマスは氷点下の予想でしたから、ホワイトクリスマスになりました。雪の朝、カメラを持って散歩したときの景色をクリスマスカードのグラフィックにしました。遅くなりましたが、メリークリスマス!

去年の12月の朝、起きると窓の景色は、真っ白の別世界。翌日からプラスの気温で融けてしまいました。こちらのクリスマスは氷点下の予想でしたから、ホワイトクリスマスになりました。雪の朝、カメラを持って散歩したときの景色をクリスマスカードのグラフィックにしました。遅くなりましたが、メリークリスマス!

アルバー・アールト設計のコッコネン自邸 (ヤルベンパー市)

フィンランドの建築デザインの巨匠アルバー・アールトが設計した作曲家コッコネンの自邸がヤルベンパーのトゥースラ湖畔にあります。人口4万人のヤルベンパー市は、首都ヘルシンキから北へ40km、電車なら30分ですから、十分に首都圏といえるでしょう。私もここに住んでいます。

ヤルベンパーは、作曲家ジャン・シベリウス(1865-1957)の故郷であり、彼は多くの名曲を世界へ発信しました。とりわけロシアと独立をかけた戦争中、フィンランドの兵士たちに勇気を与えた『フィンランディア交響詩』は、フィンランド人の精神 『SISU シス』 を壮大な音楽に創造したものです。今回ご紹介する作曲家のヨーナス・コッコネン(1921-1996)も、ここを拠点に活躍した作曲家であり、ヤルベンパーは音楽文化の都市として世界的な観光スポットにもなっています。

1969年のある夕べ、作曲家コッコネンはレストランで、親友の建築家アールトに、自邸の建築設計について切り出しました。その時、アールトはスケッチブックと鉛筆を事務所に置き忘れていましたが、どうやって、最初の設計案を描いたのでしょうか? 彼は迷わず、レストランの白いテーブルクロスに、ポケットにあったマジックペンでスケッチを描き始めました。仕事場でもあるリビングにはグランドピアノがあり、プライベートのベッドルームやキッチンなどの生活空間を巧みに連続させた初案を、流暢に描いていきました。そのプランを理解したコッコネンは、フィンランド・ウォッカで乾杯。こうして設計依頼が成り立ったそうです。レジェンドですね。

その後のコッコネン邸について。彼の死後、家族は一度は売りに出しましたが、結局、アールト建築の現存住宅として重要であるということで、市が買い取りました。コッコネン本人は、生前中も庭の手入れにあまり関心がなかったようです。市が所有することになってからも、庭の環境改善はなされず、以前と同様、放置状態が続きました。庭の設計ポイントであるプールは蓋で覆われたまま、繁茂する樹木が湖畔の景色を遮り、庭を散歩できないほど灌木が生い茂っていました。それに気づいた有志たちは、無償で茂りすぎた木を伐採し、湖の眺めを遮断する立木を間伐して、眺望が通るようになりました。さらにプールの覆いを外して水を張り、水面に反映する自然の美しさを再現できるようになりました。以前は、生い茂った木々が邪魔になり、写真を撮れなかったのですが、そのアングルからも撮影が可能になりました。以前、日本人の写真家がヴィラ・コッコネンを訪れた時に、市の紹介でご案内させていただきました。写真家は「フィンランドの四季の変化が、どのように建築の微妙な差異を生み出すか?そこにこだわり、春夏秋冬の4回、大きなカメラを携えて日本から来てくれました。

コッコネン邸の模型と室内写真です。ピアノのあるリビングからプライベート空間が連続しています。

コッコネン邸の模型と室内写真です。ピアノのあるリビングからプライベート空間が連続しています。

玄関側から見たコッコネン邸の全貌。右側からベッドルームと子供部屋、玄関。左翼にはピアノを置いて演奏したり、作曲の仕事もしていたリビングルームです。

玄関側から見たコッコネン邸の全貌。右側からベッドルームと子供部屋、玄関。
左翼にはピアノを置いて演奏したり、作曲の仕事もしていたリビングルームです。

玄関と反対側の庭から見ると右端がリビング。中央ダイニングのドアから庭に出て、湖畔のサウナに向います。

玄関と反対側の庭から見ると右端がリビング。中央ダイニングのドアから庭に出て、湖畔のサウナに向います。

以前は草木が邪魔になり、このアングルから写すことはできませんでした。<br>仕事場でもあったリビングは二面大きな縦長窓があり、自然光を取り入れています。

以前は草木が邪魔になり、このアングルから写すことはできませんでした。仕事場でもあったリビングは二面大きな縦長窓があり、自然光を取り入れています。

芝生の間にサウナと母屋をつなぐパスがあり、ログハウスのサウナから、湖畔の風景に連続します。

芝生の間にサウナと母屋をつなぐパスがあり、ログハウスのサウナから、湖畔の風景に連続します。