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2015.1.8
企画展示室ロビー。リフォームして使用したチェアは前川建築設計事務所のオリジナルデザイン。
床材は東リ特注タイルカーペット。カット&ループパイルの陰影がさりげなく浮かび上がる
1926年、日本初の公立美術館として開館した東京都美術館(当時は東京府美術館)。1975年には前川國男の設計による新館を建設。それから35年が経過した2010年から約2年間にわたり、大規模改修工事が実施されました。
改修の大きな方針は、都民に親しまれてきた前川建築の佇まいを後世に継承すること。そのために現在の躯体を極力活かし、老朽化した設備を全面的に更新。文化発信拠点にふさわしい施設とするため、展示室の環境改善のほか、ユニバーサルデザインやアメニティを充実させ、芸術鑑賞の楽しさや快適さの向上を図りました。グランドオープンは2012年6月。すべての人に開かれた「アートへの入口」となる美術館を目指し、「展覧会」「アート・コミュニケーション」「公募展」「アメニティ」の4つの事業を柱として活動しています。
企画展示室。天井高は4.5mでさまざまな展示に対応。
タイルカーペットの静かでソフトな歩行感が鑑賞をサポート
アメニティ向上の一環として3つのレストランを設置。
写真は、新しい洋食を提案する東京都美術館のグランドレストラン「レストラン IVORY」(TEL:03-5809-0940 直通)。
特注タイルカーペット
同館の企画展示室、公募展示室などには、東リ特注タイルカーペットが採用されています。美術館の床材として木質フローリングが多く見られるなか、タイルカーペットを選択した理由について、設計を担当した前川建築設計事務所主任建築家の東原克行氏は振り返ります。
「歩行音を抑え吸音性も高いことから、静かに集中して鑑賞できることです。また、高齢化が進み美術館で余暇の時間を過ごす高齢の方もますます増えていくなか、歩きやすく、万が一転倒したときのダメージを抑えられることも大きい。舞い上がるほこりを包み込むことで(ダストポケット効果)、美術品に影響が少ないことも挙げられます」
このほか耐久性やメンテナンス性など、さまざまな要素を総合的に検討した結果、タイルカーペット採用に至ったそうです。リニューアルオープンから2年以上が経過した今も、美観を保ちながら来館者の足元を支え、鑑賞空間の質的向上に貢献しています。
南の上野公園側からみた外観。
写真右が企画展示棟、左が公募展示棟
所在地 | : | 東京都台東区上野公園8-36 TEL:03-3823-6921 http://www.tobikan.jp |
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設計 | : | (株)前川建築設計事務所 |
材料(東リ品) | : | 特注タイルカーペット他 |
完工 | : | 2012年3月 |