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わんだふるな住まいの知識

ペットと暮らす住まいのポイントをケーススタディでご紹介します。

no.81

犬や猫のストレス回避

トイレの形 猫の好み編

第40回「トイレの工夫 猫編」第75回「猫のトイレの場所の工夫」で、臭いの注意やトイレトレーの置き場のサイズ、また出入りのしやすさなど猫の使い勝手について触れてきました。市販されている猫のトイレ商品には、オープンなトレー型とカバー付きのドーム型がありますね。カバーがあると臭いがこもりやすいという点と、排泄後に排泄物を踏まずにトレーを出るのがしくいという点から、私はオープン型をお勧めしてきました。

そんな中、この猫のトイレの形について、カバーがある方が良いのかない方が良いのか、フランスの動物病院の研究チームから猫のトイレの好みについての興味深い調査報告※が、2019年になされました。結果は「大きめで、カバー付きトイレの方が好まれやすい」というものでした。

フランスの研究チームの調査報告

この調査では、部屋に「カバー付き」と「カバー無し」を並べておいて、猫に好きな方を選んでもらうというものです。まずは、両方とも同じサイズにして、13匹の猫に協力してもらいました。次に12匹の協力を得て、「カバー付き」を「カバー無し」より面積を一周り(17%)ほど大きくしています。結果は、「カバー付きで、大きい方」が好まれたと分析できたそうです。ただし、同居する動物がいない単頭飼育、なおかつ完全室内飼育の猫であり、トイレ内はいつも清潔に管理されていること、そしてカバーにはスイングドア(出入り口の扉)の無いものとの条件のもとでした。

広さに関しては、「トイレは大きい方が猫に好まれる」というのは先行研究の結果もありますし、広い方が良いというのは頷けます。カバーに関してですが、トイレトレー(カバー内)を引掻くという、猫がトイレの不満を示す行動が、ドーム型(カバー付き)トイレで多く見られますので、「カバー付きのトレーが最高」ということもないと、私は考えます。しかし、猫的に「横から誰かにちょっかいかけられないような個室空間」をカバーに期待されているようにも考えられます。

猫にとって快適なトイレ空間とは

市販のものでは、大き目のトイレトレーはドーム型があまり見られません。トイレ空間を「通気が良くて臭いがこもりにくい」「用を足した後の砂の上を歩かなくてもすむほどに広く」という2つの配慮もしてあげられる空間をと考えると、カウンター下などのホコラ状空間が良さそうです。空間の高さはカバー付きトイレトレーが置けるぐらい、広さはトレーの外を一回りできるぐらいを確保します。そこでは、カバー無しのトイレトレーであっても、猫の期待する「邪魔が入らない」「広め」「臭わない」というトイレ空間が可能になりそうです。

※「Field assessment in single housed cats of litterbox type (covered/uncovered) preferences for defecation,」Beugnet, V.V., Beugnet, F., Journal of Veterinary Behavior (2019),

doi: https://doi.org/10.1016/j.jveb.2019.05.002.

profile

金巻先生(一級建築士)

一級建築士・博士(工学)・家庭動物住環境研究家一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰。

犬や猫といった家庭動物(ペット)との暮らしをテーマにした建築設計と、環境コーディネーターとして活動。適正飼養と環境整備に向けた学術研究も進めている。著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。ペット防災のNPO法人ANICE理事。東京都動物愛護推進員。H25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」

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