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| インテリアセミナーレポート |
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福岡で開催された住まいと環境を考える会の公開講座レポートの第2部です。今回は佐藤清氏の講演をご紹介します。佐藤清先生は、前回の村瀬先生が代表をつとめるグループレインドロップスのメンバーであり、潟eクノプラン建築設計事務所代表で一級建築士、衛生工学技術士、雨水利用を進める全国市民の会メンバー、と村瀬先生同様、様々な活動をなさっている方です。 村瀬先生は雨水利用のポリシーを中心にお話しされました。佐藤先生はそれを支える技術的なことについてお話してくださいます。
◇雨水利用のシステムは単純な方がよい。 佐藤先生は、15年程前から雨水利用の研究をされています。先生の事務所(もとは、ご自宅)にも、もちろん雨水タンクがあり、地下のタンクで約60トンの雨水を貯めることができるようになっています。その事務所を使って、いろいろな雨水利用の実験的なことをなさっています。 また、先生はアジア各地を環境調査ということで訪問されており、その時の経験から、いくつかの設計の考え方がまとまってきたとおっしゃいます。「結論からいうと、簡単な方がよいだろうということです。複雑にすればするほど、難しくなりますし間違いがおきます。メンテナンスができなくなってしまいます。ただ、単純にしていくってことは実は技術的に一番難しいことなんですね。」そのあたりのことを踏まえて、先生が世界各地をまわってみてきたことを教えてくださいます。
◇地下水が飲めない。雨水が飲料水。 「ミャンマーの喫茶店です。ニッパ椰子などでできている屋根から落ちてくる雨を、軒先に張ったテントのようなもので受けて、ドラム缶にあつめて利用しています。この雨水、何に使うと思います? ミャンマーは上水道も下水道も発達していません。ですから飲料水として使うんです。あと、アジアの人たちの水の利用法として重要なことがあります。アジアの人々は、トイレでお尻をきれいにするのに、水で洗うことが多いんですね。回教徒だけじゃないのです。なぜかというと紙が非常に貴重だからです。だから、雨水はお尻を洗うのにも使います。」 下水道がない国では、トイレの排水も全部地下水に戻っていってしまいます。だから地下水に人間や動物の排泄物が混ざっていたり、一般細菌や雑菌類が非常に多いのです。アジア地区の問題は、基本的に地下水が飲めないということだと先生は説明します。地下水が飲めないから雨水を飲料水として使っているということです。
◇ お浄めの水は、水道水でなくて雨水。 ミャンマーの人々は敬虔な仏教徒。お寺に入るときに足や手を洗うために使う、お浄め用の水としても雨水を利用しています。人間が浄められる水は、人口の水道水でなく、自然の恵みである雨水しかないという考え方もあって、雨水が利用されているそうです。
◇ 安全な水を得る方法。 アジアの国々では、きれいで安全な飲料水を得ることが、非常に難しいということがわかります。安全な水を得る方法として考えられるのは、煮沸すること、ろ過することの他に、太陽光で蒸発させてきれいにするという方法があるそうです。雨水や水道水を貯めておいて、太陽のエネルギーで蒸発させてきれいにしたあとで、それを飲む。自然のエネルギーを利用した例です。
◇ ケニアの学校の雨水を利用した環境教育。 アフリカのケニアは、雨量が非常に少ない国です。ケニアの学校で行われている、環境教育の例を紹介して下さいました。「ケニアの学校です。こういうところには水道はきていませんから、屋根からスチール製の雨水タンクに雨水を貯めています。子供たちは1日にコップ1杯の水が飲めるだけなんですけど。水道水があれば無制限にいくらでも水が飲めるのですが、子供たちはたった1杯の飲み水のために雨水を貯めているんです。これはある意味、環境教育です。」
◇輝く目を持つ、子供たち。 この学校では、子供たちが食べる食料も畑でトウモロコシなどを作っています。また子供たちの排泄物も、全てコンポストにして肥料にして使います。全てが、生きていくことにつながる生活なのですね。日本の学校は、あくまで教育の場であって、生きていくために体を動かす場ではない。日本の子供たちとアフリカなど発展途上国の子供たちでは、目の色がちがっていると先生はおっしゃいます。アフリカの子供の目はとても輝いていて、それはやはりこういう生活の環境のちがいからくるものだろうと先生は感じたそうです。
◇ 空気がきれいだと雨水もきれい。 このケニアの学校のタンクは、屋根から雨水を集めるだけという単純な仕組みでできています。フィルターはとても小さなもの。これは、いかに空気がきれいであるか、ということを示しています。不純物が空気中になんにもないから、小さいフィルターだけで、雨水が飲料水として使えるということを証明しているわけです。空気さえ汚れていなければ、雨が降っているところで直接コップで受けて飲むことだってできる、と村瀬先生も話していました。
◇ 乾季に備えて雨を貯める。 アジアに共通していえることは、雨季と乾季がものすごくはっきりしていること。日本は、1年を通して普通に雨が降りますね。アジアは基本的に、赤道直下のインドネシアやマレーシアを除いては、季節が雨季と乾季に分かれています。基本的には内陸型の気候です。乾季に備えて、いかに水を貯めておくかということで雨水利用が活用されているようです。 タイの農村地帯に行くと庭に大きな雨水利用タンクが置いてあるそうです。乾季に備えて雨水を貯めているのですね。
◇ 節水が国家目標!! 台湾では、徹底した雨水利用や節水が実行されているそうです。「台湾の雨水利用は、日本人が考えているようなスケールではないんですね。例えば、日本の東京ドームの何倍ものスケールで、雨水利用を考えています。台北の動物園で使う水を貯めるために、普通だったら屋根から貯めるんですけど、ここはそれだけじゃないんです。動物園のまわりにある山から、雨水を集めてきています。それを、沈殿とろ過をして、動物園の水として使うのです。さらに動物園の管理塔の屋根で集めた雨水も、トイレの洗浄水や動物の飼育用に使っています。あと、驚いたのが、園内いたるところに“節水”と書いた旗が、並んでいること。節水が国家目標なのですね。」 台湾では、地形状、水を貯める大きな場所がないということで、数年後に渇水が予想されているそうです。従って、雨水を貯めて利用していこうという政策に変わってきているのです。現在のところ、雨水利用には政府が100%お金を出しているということです。これも日本と決定的にちがうところだと先生は指摘します。
◇ 節水用の蛇口。 台湾にある、節水蛇口の写真です。日本にはないものだそう。蛇口から水がドボドボ出てくるのではなくて、霧状になって出てくる仕組みになっています。ですから、ほんの少しの水でもきれいに手が洗えます。節水ということに非常に高い効果が得られるものということです。
◇水を大量につかう癖がついている日本人。 「節水ということで少しお話します。日本人が平均的につかっている水の量は、250リットルくらいです。ヨーロッパ人、特にドイツ人が使う水の量は130リットルなんですよ。日本人が、水をいかに大量に使っているかがわかります。水を使うことと作ることを両方、見直さないとダメなんです。日本では、雨水利用ということで、貯めることを一生懸命やろうとしていますが、それと同時に節水するということを、逆に台湾などから学ばなくてはならないですね。」 確かに私たちは節水ということに対して、無頓着であるようです。雨不足で水が本当になくなりかけて、やっと節水を思い出しますが、普段はジャージャーと大量に使っていませんか? 外国のホテルで、日本人が同時にたくさん泊まるとお風呂の水が出なくなるといわれるくらい、日本人はたくさん水を使う癖がついています。この癖をまず直していくことも重要なのですね。
◇ ハワイでの雨水利用の理由。 ハワイでは、標高800m、1000mを越えた山の部分に上水道を送らない、という決まりがあるそうです。乱開発を防ぐためかと思われます。水の来ていない土地に、人間は住むことができません。だから、水道の来ていない上の方の土地に住む人は、全て雨水利用をしなきゃいけないのです。雨水利用の水を飲み、シャワーなどで使う水も雨水を貯めたもの。ハワイは、日本よりも降雨量が多く、年間3000mm近く降るので、雨水利用するのにはとても向いているのだそうです。 ハワイの雨水利用に使っているのは、木製タンクです。ハワイだけでなくアメリカ本土の方でも、高層ビルの上水タンクに木製のものは多く使われているのだそうです。雨水利用ということでエコロジカルな考え方でいくと、当然タンクも木のものを使いたくなるのが心情ですが、現在日本でタンクを木で作ろうとするとものすごく高くつくのだそうです。プラスチックなどのあまり環境によくないものの方が安い。木のタンクは普及しにくいのが現状です。
◇ ドイツで開発された雨水利用のシステム。 ドイツは雨水利用がとても進んでいる国。雨水利用の仕組みを研究している会社も多いようです。ヴィッシー社もそのひとつで、おじいさんが一人で、一生懸命研究開発している会社です。ドイツも日本も同じことがいえるそうですが、都会で雨水利用をした場合に、問題になるのは大気汚染による油。 このおじいさんが開発した機械の仕組みはこんなかんじです。「ポンプは雨水タンクの中に入っています。それはなぜかというと、一つはドイツはとても寒い国なので凍ることを防ぐためです。雨水タンクは地下にありますから、中に入れておけば凍らないのです。もうひとつはポンプに浮き玉がついたフィルターがついています。水に入れておくと、タンクの中で一番きれいなところの水を吸い上げることができるという仕組みになっています。一番悪い部分は、タンク内の底の水と表面の部分です。この2ヶ所以外の場所から。吸い上げる仕組みを作れば、きれいな水がさっと得られる。きれいな部分ってのは、水道法の検査をしてもなんの問題もないものです。」
◇ 地下水が水源であるがゆえのさまざまな工夫。 ドイツの水源は川でなく地下水です。そのために発生するのが都市の地盤沈下問題です。ベルリンが一番被害がひどく、最悪なところで1.5mくらい地盤沈下したことがあるそう。地盤沈下をいかに防ぐかということが重要です。 まず、駐車場のような場所でも水の地下浸透を促進するために地面をアスファルトで覆わないようにしています。さらに地下水を守るための工夫もされています。ドイツでは車を洗う場所が決められて、駐車場(例え自分の家であっても)など、どこででも洗うことは禁止。洗浄した時に出る汚水を、処理できる設備が整った所で洗うようになっています。車を洗うと油が出ます。その油が地下に浸透して地下水を汚染することを防ぐために、そういう決まりがあるのです。
◇ トイレで雨水利用。トイレで節水。 まず最初にドイツの幼稚園での雨水利用トイレのお話です。タンクのところにブタと雲のシールが貼ってあるのだそうです。ブタは貯金箱で知られていますが、お金を貯めるということの象徴。雲は雨が降るということ。雨水を使うことでお金が貯まるんだよ、ということを教えているのです。 次に節水型のトイレのお話。日本のトイレは、普通、洗浄するのに水を12リットル使います。節水型で8リットル。ドイツの節水型トイレは、5リットルが平均的な数字だそうです。なぜ、こんなに少ない水で流せるのでしょう? それは設計がちがうから。「配管は必ず高いところから低いところへ流れます。配管の上流部に、台所やお風呂の排水管を繋ぐことになっているのです。ですから、トイレで万一流れなかったことがあっても、上流部から台所やお風呂で使った水が流れてきて、押し流す仕組みになっているのです。こういうきめの細かい設計があるのです。」 節水を実行するために、設計時から工夫がされているのですね。ですから、いきなりこの節水トイレを日本に持ってきて使おうとしても、大丈夫な家庭とそうでない家庭がでてくるというわけです。日本にも、節水や雨水利用をささえる考え方や設計が、もっと普及するとよいと感じます。
◇ エコロジィーヴィレッジの中心的役割を果たす雨水利用。 ドイツには、エコロジーを突き詰めていった村がたくさんあります。そういったエコロジィーヴィレッジで、中心的役割を果たしているのが雨水利用です。「この雨水利用の装置は非常に単純なものです。が、それはものすごくいろんなことを考えた上で可能になっている。屋根で集めた水が、パイプを通って落ちてくるだけなんですが、葉っぱや砂は下に落ちて、水だけがタンクに入るようにできています。この装置は、重力だけを利用していて、エネルギーは一切使わないものです。雨水タンクを設置する場所によっては、ポンプが必要になったりするんですが、きちんと考えて作ると、置くだけで使えるんです。」 配管を工夫したり、タンクの置き場所などを考えると、電力を使わずにきれいな水だけをタンクに貯めて使うことが可能になるのですね。さすがエコロジィーヴィレッジ。徹底しています。
◇ 明治時代末期に建てられたビルで雨水利用をしていた!! 横浜にある旧三井物産ビルは、明治44年に完成したビルです。なんと、そのビルには、雨水利用の仕組みがあったのです。雨水利用もやっていて、建物の中に浄化槽も設置していて、消火栓もありました。今考えられる防災設備や水をきれいにする仕組み、雨水を使うということをだいたいひと通りやっていたのです。このビルの雨水利用の設備は、屋上の1/3の面積で雨水を集め、屋上のすぐ下の部分がタンクになっている。上にタンクがあるので、電力等を使うことなく重力のみで、トイレに流したり消火栓に流したりできるという、理にかなった設備だったということです。この建物自体は現存しますが、雨水利用はされていないそうです。
◇ 雨水利用でコミュニケーションを。―環境共生住宅の場合― 集合住宅において、雨水を1戸1戸の家に供給して利用するということは、まだ難しいことなのだそうです。ですから、この東小金井にある43世帯が住む集合住宅では、貯めた雨水は、屋上菜園を通って池の水へと循環しています。この雨水利用には約束事があるのだそうです。 「貯めた雨水は最終的に池に行くわけです。池には、金魚やメダカやカエルなどの生き物が住んでいます。ですから、もし屋上菜園で、農薬なんかを使った場合、池の生き物が死んじゃうんです。ここの菜園では、農薬は使わないということになっています。これは環境教育の大人版ともいえます。」これは、知らない人が集まって暮らすところでの、コミュニケーションの場としても重要な役目を果たしているということです。
◇ 貯めた雨水、フィルターだけでゴミを取るには…。 水をどのようにしてろ過するか、ということは重要な研究課題であるそうです。沈殿して分離させるという方法は、もちろん正しいのだけれど、その場合どうしても装置が複雑になったり大掛かりになったりするのが気になるわけで…。そこで先生は、単純にフィルターだけでゴミがどのくらい取れるかということを実験してみました。「200メッシュというのを使いますと、油も取れるんです。油煙が引っかかる。ただし、水滴がネットに溜まるので藻が生えてきてしまいます。そうすると目詰まりをおこしてしまうのです。この結果からみると、フィルターには100メッシュくらいが、一番よいのではないかという結論がでました。住んでいる場所にもよりますけど。都市なら100メッシュ。山や野原なら50メッシュでも大丈夫です。」 ☆100メッシュ=1インチ四方の中に線を100本引いたもの。(茶漉しは30メッシュ程度)
◇ 植物浄化を利用した雨水のろ過。 先生の事務所の屋根のまわりに、約60cmほどの樋があって、そこには土を入れて植物が植えられています。雨が降ると、この植物が植わっている樋の中に入ります。そこから溢れたものが、地下タンクに貯まるという仕組み。 「60トン貯まりますが、先日の大雨で満タンになってます。11月くらいから東京は雨がぐんと少なくなってくるのですが、満タンで60トンありますから3月くらいまで、充分使えます。樋に土を入れて植物を植えてろ過する、植物浄化という方法は、ヨーロッパではよく使っているテクニックなんですね。草花の中に、わざわざ水を通していくという方法。」機械的な装置を使うのではなく、自然の原理を利用した、エコロジカルなろ過方法ですね。
◇考え方、工夫、仕組みを総合的に進めることが大切。 雨水利用の役割に、洪水の防止があるという話は、村瀬先生からもお聞きしました。しかしながら、日本ではなかなか実行されていないのが現実のようです。「神田川周辺では、洪水がしょっちゅうおきるからといって、水が入ってこないように防ぐ門をつけている事務所や駐車場をよくみかけます。そんなことより雨水利用をすべきなんです。ドイツで雨水利用が盛んなのは、下流にオランダがあるからです。ライン川は、ここ数年洪水がよくおきるようになったということで、まわりでは雨水を貯めて流さない工夫を、どんどん行っています。アメリカでは、洪水を防ぐために雨どいを細かく設計している。日本は、最近になってやっと都市型洪水の原因がわかってきて、いろいろ変えていかないといけないと考えはじめましたが、やはり工夫や考え方や仕組みを総合的にやらないと問題は解決しないと思いますね。」という言葉で先生は講演を終えられました。
◇水の大切さをもう一度、身をもって知るために…。 この日、先生方のお話を聞いて、私自身、どういう理由で、なぜ雨水利用が大切なのかということがわかりました。そして、雨水を利用する仕組みや工夫の数々の例を見て知ることができ、その中から例えば自分でできる方法はどれだろうと考えました。 水は人間が生きていく上で絶対必要なものです。それなのに、あまりにも簡単に、蛇口をひねるとたくさんのきれいな水が出てくるという恵まれた環境にある私たちは、水の大切さを忘れがちです。それを思い出すためにも、雨水利用。雨水を自分の手で貯めて利用してみることで、水の大切さを私たちは思い出すのではないでしょうか。
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