2006.6.1
フィンランドデザインとフィンランドの自然との関係
Ver.1 |
ソニー・ナカイ グラフィック・デザイナー |
|
|
フィンランドデザインと呼ばれ、世界的な人気を博した、数多くの製品といえば、テキスタイルではマリメッコ社のウニッキ(大胆な色使いと単純化されたケシの花模様)、ガラス器ではイッタラ社のシンプルなグラス類、アラビア社の陶磁器などが浮かびます。さらにアアルトを初めとする多くの近現代の建築デザインも含めて、フィンランドデザインは幅広く、我々の眼と心をうるおしてきました。
1970年代からフィンランドのヘルシンキ美術大学へ入学し、卒業してからもフィンランドに住み着いた私は、その当時の学生達と知り合うことが出来ました。彼らの多くは今、世界に向けてフィンランドデザイン作品を発表しています。それらには、フィンランドデザインの匂いが感じられて、ついつい買いたくなってしまうのです。
さて、フィンランドデザインとは、シンプルなフォルム、シンプルな素材、シンプルな色彩という、確かなデザイン意識に基づいて創作されています。他の国のものからは、あまり感じることのできなかった「デザインの価値観」に、私はフィンランドで出会いました。最近の若い作家達は、1970−80年代をデザイン学生として過した、我々の「その時代の感性」を無視するかのように、全く新しい感性で創作しています。これもまた素晴らしいことだとは思いますが、その昔、確かに存在したフィンランドデザインの感性がなくなってきているようです。
「いわゆる、グローバルデザインになってきている。私の感じているフィンランドデザインの背景には、いつもフィンランドの自然が横たわっているのに、そんなことは今の世代にとって、あまり重要ではない。ノキアのように、あまねく世界に通じるデザインを目指しているのだ。」そんな風に感じるこの頃です。 |
|
|
|
|
マルック・コソネンは、フィンランド産の木を使った作品を制作するアーティストとして、フィンランドのみならず世界的に知られています。森と湖の国フィンランドで育ったコソネンにとって、木は日常生活と密着していました。「木の精」との長年にわたる付き合いは、コソネン自身の内面に大きな影響を与え、森を愛する感情を育み、フィンランドの木を生かした芸術作品を制作することに集中させてきました。
フィンランドの森林・木材関連産業は、数多くある樹種の中から、主要な3種類だけを活用しています。針葉樹のパインとスプルス、広葉樹の白樺(英語でバーチ、フィンランド語でコイヴ)です。しかしながら彼は、なかば見放された残りの約30種に注目し、それらを素材とした創作活動を行っています。
そのようにフィンランド産の木にしか興味を示さなかったコソネンですが、2004年には山口県萩商工会議所主催の「竹・ミーツ・フィンランド」展に参画し、竹を素材とした作品にも挑戦しました。日本では、維持管理を放棄された竹薮が、その強い生命力により里山を破壊し、森林の生態系に悪影響を及ぼしつつあります。そこで、竹の有効利用から森林保全を図るという活動に賛同したのが、その理由です。この展覧会には、他のフィンランドのデザイナーも数名参加し、2004年12月には東京の新宿パークタワー、そして昨年の8月にはフィンランドの首都ヘルシンキ中心部にあるデザイン・フォーラムで開催されました。寒冷な気候で竹が生育しないフィンランドのデザイナーによる、新鮮な視点からの竹デザインの提案は高い評価を得ました。 |
|
|
|