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建築ブームの背景は?

〜最近のフィンランド事情あれこれ〜

2017.7.13 / ソニー・ナカイ(グラフィックデザイナー、在フィンランド)

日本ではもう、夏服の季節になったでしょうね。フィンランドでも6月の夏至祭(ユハンヌス)を過ぎて、やっと夏らしい気候に変わりました。ここから夏本番というイメージです。

さて、フィンランドでは、数年前から新築工事現場で発生する埃や騒音問題などが、いろいろな場所で気になり始めていました。今年になって、その前兆は本格的建築ブームに変貌しつつあります。その背景と現状をお伝えしましょう。

フィンランドの生活水準と、住宅リフォームの関係

フィンランドの総人口は550万人(男性270万、女性280万)で、およそ330万台の自動車を保有しています。ヘルシンキ首都圏以外では、乗用車で通勤する人が多いのです。(注:自動車の保有率は日本と同じくらいです。)

国土面積は33.8万平方キロメートル(注:日本は37.8万平方キロメートル)で、日本より1割ほど小さいのですが、森と湖に囲まれて、なだらかな平地が多いのが特徴です。森林面積は国土の7割を占めており、森林産業国として成り立つ国でもあります。平均所得は3,000ユーロ(手取り額2,000ユーロ)程ですが、残業はありません。家族との時間を大切にできる仕組みが成り立っています。仕事への態度は真剣で、より効果的なビジネス手法と高度な品質管理を心がけています。インフレ率は、この10年間はおよそ2〜3%と、毎年少しずつ上昇しています。だから、貯金よりも将来への投資が賢明という考えが強くなり、特に居住環境への投資が最大です。人口の密集度が高くないこともあって、広い家を所有できるし、マンションでも共同庭園があるのは常識です。戸建て住宅であれば、家の庭から森へ連続するので、1ヘクタールの森林付きという環境も不思議ではありません。国民一人当たりの名目GDP(2016年USドル換算)は、フィンランドが43,169ドルと、日本が38,917ドル、僅差で日本を超えています。人口が少ないことで発生するネガティブな社会現象はあるのでしょうか?

こんな経済事情の中で、数年前から ヘルシンキでは都市計画の投資が大きく組まれてきました。今年は、都市インフラ整備と新築工事が目立ってきました。特に海浜エリアの土地利用は住宅建築ブームです。ショッピングモールや病院、幼稚園と学校から自家用ヨットの専用ハーバーも増えています。総人口の増加は「移民」によるもので、数年前までの500万人から現在は550万人へと、短期間で増えてきました。

建築ブームとリフォーム工事の例

ヘルシンキ中央駅から地下鉄で4つ目のカラサタマ(Kalasatama)駅周辺は大がかりな都市計画が進行中で、至るところから工事の槌音が聞こえてきます。敷地はいくらでもあるフィンランドですが、100mくらいの高層建築も見かけるようになりました。このカラサタマ海岸都市では、半年後にオープンするマンションのイメージ写真が価格付きで表示されていました。注意して見ると、二つの価格が表示されていました。一括即金払い価格なら、即入居可能で利子も不要。でも、フィンランドではローン支払いが普通です。契約後、毎月銀行に支払いますが、ローン期間は、個別に設定する制度です。

カラサタマ駅の壁に貼られた地域都市計画の完成イメージ図です。駅の周辺には、病院やモールが立ち並びます。さらに、地震と津波の不安がないので、右下イメージのように海面上に浮上する住宅も建築可能!?

カラサタマ駅の壁に貼られた地域都市計画の完成イメージ図です。駅の周辺には、病院やモールが立ち並びます。さらに、地震と津波の不安がないので、右下イメージのように海面上に浮上する住宅も建築可能!?

日常生活では「サウナ」が重要なアイテムです。市営プールには、必ず快適なサウナ設備がありますが、ほぼ毎年、夏場の1か月間を休館して、細かい部分まで修繕工事をしています。さらに築40年を超える建物では、必ず1年がかりの大規模改修を行います。フィンランドの市民生活とは、このようなところまで「快適さ」が約束されています。国民の払う税金が、国民のために使われている、その一例だと思います。

実は私のオフィスは1970年代初期に建てられたマンションです。去年、丸々1年かけて、給水管の入替えと屋根、壁、ベランダからドアまで、すべての外装改修工事を行いました。これで、月々の維持費は倍にふくれ上がりましたが、居住者全員の同意で決めた事なので、しぶしぶですが払っています。フィンランド人は、ペンキが剥がれればすぐに塗り直すという具合で、絶えず居住環境への投資を心がけることで、生活水準を保っています。

マンション建築の時代を判別

マンションの建築デザインは、およそ10年ごとに変貌していますので、開発地域の年代が推定できます。1960年代には、フラットな屋根とプール設備が好まれて、大きな開口部が主流になりましたが、70〜80年代になると、積雪の重さに耐えられず、強い傾斜角度のとんがり帽子形の屋根に変わっていきました。また、70年代はオイルショックの影響で省エネ思想が広まり、小さな窓に回帰しました。2000年以降のインテリアの特徴は、なんといってもトイレ空間の大きなことです。小部屋くらいの広さがあり、シャワー付きのトイレ空間なら、車椅子で楽に動ける広さが常識になっています。また、マンションでは、車椅子利用が可能な共用トイレの設置が義務付けられています。